人工呼吸器を用いた手術を受ける際の呼吸リハビリテーション
はじめに
息を吸って吐くという呼吸は、人間が生きていくうえで切っても切り離すことのできない動作です。
健常な人なら特に意識することなく行っている呼吸ですが、呼吸器に病気を抱える人や身体の弱った高齢者の人などでは、十分な呼吸を行うことができず苦痛を感じていることも珍しくありません。
このようなケースにおいて、スムーズに呼吸ができるようにする目的で行われるのが呼吸リハビリテーションです。
なお、呼吸リハビリテーションは上記のようなケースだけでなく、人工呼吸器を用いた手術を受ける患者さんに対しても行われます。
これについて、以下で詳しく見ていくことにしましょう。
呼吸リハビリテーションについて
なぜ人工呼吸器を用いた手術を受ける患者さんに呼吸リハビリテーションをする必要があるのでしょうか?
また実際にどのようなことが行われるのでしょうか?
なぜ呼吸リハビリテーションが必要なのか?
手術の際に全身麻酔を使うと、自力では呼吸することができなくなります。
このため人工呼吸器が装着されるのですが、このとき気管にチューブを挿入することから気管支が刺激され痰が増えやすくなります。
そして、手術の後は痛みにより咳がしにくくなるので痰がたまりやすく、気管支が詰まることで生じる無気肺が起こりやすくなります。
それに加えて、痰の中には細菌が多くいますので、肺炎を発症するリスクも大きくなります。
そこで、無理なく呼吸をしたり、痰を出したりすることができるようになるため呼吸リハビリテーションが行われるのです。
もちろん、手術後の呼吸が苦しくなるときにリハビリの効果を発揮することが期待されるのですから、実際の呼吸リハビリテーションは手術前から行われることになります。
呼吸リハビリテーションの方法
呼吸リハビリテーションでいちばん大切なのは腹式呼吸です。
呼吸をするときに最も重要な役割を果たす筋肉は横隔膜で、呼吸という運動のおよそ6割から7割は横隔膜の働きによるものと考えられています。
腹式呼吸は、別名「横隔膜呼吸」と呼ばれるくらい横隔膜を使いますので、意識して行うようにすればその筋力を鍛えることができ、結果として手術後の呼吸や痰を排出する咳が楽にできるようになるのです。
腹式呼吸のやり方としては、膝を立てて仰向けになり胸と腹に手を置きます。
そして、胸はできるだけ動かさず、腹に置いた手が持ち上がるように、鼻から深く息を吸い、次に口をすぼめ、腹の筋肉を使ってゆっくりと息を吐いていきます。
回数としては、1セット30回で、1日に3セットから5セットが目安となります。
最後に
手術前の呼吸リハビリテーションとしては腹式呼吸のほかに、専用の器具を使った呼吸練習が行われることもあります。
また、痰を排出するための咳の練習も行われますが、具体的な方法はリハビリを担当する理学療法士などの医療従事者や、あるいは施設によって異なります。