命を照らす手術台の照明

治療用機器

手術室に入ったことのない人でも、テレビなどで見たことがあるかもしれません。手術台を照らすあの独特なデザインの照明を。安全で効率的に手術が行えるよう考えられた医療器具の1つです。

無影灯 ~むえいとう~

この「無影灯」は電球や反射板によって、光を乱反射させる仕組みが施されています。手や医療器具をかざしても影ができないように、多数の電球が取り付けられた手術用照明灯のことです。

無影灯の電球たち

過去、レンズや反射板を組み込んだ白熱電球「シールドビーム電球」や、自然光と同様の「演色性」を得るために「クリプトン電球」や「ハロゲン電球」などが照明として使用されてきました。しかし、近年は発光ダイオード LED照明の「演色性」の向上によって、LED照明化が進んでいます。

「演色性」が重要

細心の注意が必要になる手術において、光の正確な色調や照度は大変重要です。そのため、
自然の光と同様の「演色性」で照らすことができるよう、手術台の照明には物体本来の色や質を照らし出すための工夫が施されています。

照明の「発熱量」

照射対象である患者さんの負担の緩和、執刀医やスタッフの目の疲労を考え、手術台の照明は光をできる限り低温で供給できるようにと考えられてきました。LED照明によって、従来のハロゲン電球に比べて発熱量が少なくすることが可能になりました。

ハロゲン電球の寿命は通常約1~2年で交換が必要となりますが、LED電球は約7~10年という寿命の長さで、さらに消費電力も軽減されます。そのため、ランニングコストの低減にも繋がります。さまざまな分野で使われているLEDですが、手術室でもそのテクノロジーを発揮しているのです。

照明の規定

過去に定められた照明基準が、2010年に約30年ぶりに改定され、「推奨照度」「不快グレア」「演色評価数」 などの質的要件を加えた照明基準に改定されました。

照明設計の際に参考とする「 JIS Z 9110」の「保健医療施設」の照明基準総則によって以下のように定められました。

【診療/検査空間 手術室の指針】
〇維持照度(使用している期間中に下回らないように、維持すべき値)
1000lx(750-1500lx)

※手術部の照度は 10000~100000lx  /UGRL(屋内統一グレアの上限値):19 以下

lx(ルクス)とは国際単位系における、明るさを表す指標で「照度」の単位です。lxは光に照らされた面の明るさを示す単位となります。

まとめ

無影灯は手術灯とも呼ばれています。手術台で使用される照明は、手術作業への影響がないように「無影灯」によって影がでないように考えられ、正確な色調や照度のために「演色性」、患者さんや医師・スタッフへの負担を考えられて「発熱量」が抑えられ、そして操作性の向上や老朽化の防止など、多くの技術改良によって作られています。

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