脳波計の時定数の役割について
脳波計を用いた脳波の測定によって、脳神経の変化を把握することができます。脳の神経細胞が発している電気信号は、脳活動に当たる情報の伝達と大いに関係していると見做されているためです。今回は、脳波計の時定数の役割について紹介したいと思います。
脳の状態が脳波の種類で判定される
脳波計が表示する脳波の変化の測定結果は、脳の働きや睡眠状態、さまざまな病気の特定に役立てることができます。脳波と脳の状態に関して研究が重ねられてきた結果、現在では脳波の解析によって、てんかんや意識障害や脳の損傷の判断まで診断できるようになっているのです。
脳波検査は、頭部に多数の電極を取り付けることによって、脳に生じる電気信号の状態を波形すなわち脳波として測定し、得られた脳波の種類や状態を診断の判断材料とする方法で行われます。
〇正常脳波
一般的な脳波活動のことを「基礎律動」と呼びます。δ(デルタ)波=1-3Hzと、θ(シータ)波=4-7Hzと、α(アルファ)波=8-13Hzと、β(ベータ)波=14-Hzなどによって表示されています。
健常者の場合、安静覚醒閉眼時においてはα波が基礎律動となり、後頭部優位に出現します。正常な成人(25才から65才)では9~11Hzのα波が出現し、緊張状態やストレスを感じる場合にβ波が出現するという特徴があります。
また睡眠の深さについても、正常脳波では段階的に特徴が現れます。安静覚醒閉眼時の脳波はα波が主体ですが、睡眠に入るとθ波の占める割合が多くなり、さらに眠りが深くなるとδ波が見られるようになります。
〇基礎律動の異常
基礎律動の異常の一部は周波数の異常として確認され、その場合、基礎律動の徐波化(ゆるやかな振幅で、幼小児の脳波や睡眠時の脳波で出現)が見られます。特定の変化の異常が限局性の徐波化となり、腫瘍や炎症、てんかん焦点といった発作が起こる場合の病変を判断することができます。
〇異常脳波
非突発性異常や突発性異常による脳波では、基礎律動の異常に関係なく突然の発生および終息によって異常かどうかがわかります。突発波において関連性の高い病状はてんかんであり、その診断や分類、治療効果判定に測定結果が反映されることとなります。
脳波計の時定数の役割
脳波計による測定時にはノイズが混入します。その要因として、交流電源や脳波計そのものが発している場合と、患者が咳をしたり緊張したりすることによる筋肉の収縮または呼吸や発汗などの生体反応がノイズとなる場合が考えられます。
患者の身体活動に伴うノイズを遮断する機能として、脳波計には高周波フィルタと低周波フィルタが備えられています。筋肉の動きに伴うノイズは高周波フィルタ、呼吸や発汗に伴うノイズは低周波フィルタで対応します。低周波フィルタにおいて、どの程度の周波数を遮断するかに関係してくるのが「時定数」です。
時定数とは、較正電圧を入れた後その効果が現れるまでの時間を意味します。較正電圧は機器の誤差が最も少なくなるようにする特徴を活かして、校正用調整器を調整するための標準電圧のことです。
脳波計における時定数は、振幅が37%以下まで下がる状態となるのに要する時間のことを指します
時定数tと低周波フィルタの周波数fの関係性は、f=1/2πtの式で表されます。
一般的な脳波計の時定数は0.3秒であるため、これを式に当てはめるとf=0.53Hzとなります。つまり0.53Hz以下の周波数はノイズとして遮断されることとなるわけです。
まとめ
時定数は、低周波フィルタにより遮断する周波数の大きさを決める値であり、脳波計における時定数は0.3秒でその際の低周波フィルタの周波数は0.53Hzであることを確認しました。
時定数の役割によりノイズと見做される波形が取り除かれ、精度の高い検査結果が得られるわけです。