人工呼吸器の仕組みを理解して医療に臨む
人工呼吸器と聞くと重篤な患者さんの為の医療機器として思い浮かべます。人呼吸器の取り扱いは、その基本的な仕組みを理解する事から始まります。今回は、呼吸運動の仕組みを交えて人工呼吸器の仕組みを紹介しましょう。
人体の呼吸運動とは
人体は呼吸をする事で体内に取り込まれた酸素がエネルギー源に変わります。このエネルギーによって細胞活動を起こし、二酸化炭素が生成されて体外へ放出されます。この繰り返しの運動を呼吸活動と呼びます。成人による呼吸の回数は、1分間に15~17回になり、新生児の場合だと1分間に40~50回に及びます。年齢が低いほど呼吸運動が活発なのが分かります。
呼吸不全になると人工呼吸器が必要
呼吸運動による活動は、血液中に酸素を取り込む事になるのですが、いろんな要因により、酸素が取り込めなくなると、呼吸不全の状態に陥ります。これは動脈の血液に酸素がどのくらい含まれるのかを示す「動脈血酸素分圧(PaO2)」が、60mmHg以下の状態を示しています。
また、動脈の血液に二酸化炭素がどのくらい含まれているか示めす「動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)」の状態によって、二種類の呼吸不全があります。
●PaO2が異常値で、かつPaCO2が正常値の場合に数値が35~45mmHgとなると「1型呼吸不全」とします。
●PaO2が異常値で、かつPaCO2が異常値の場合に数値が60mmHg以上を示すと「2型呼吸不全」としています。
人工呼吸器の仕組み
異常値の場合の患者さんに対して、人工呼吸器を使用する事になります。人工呼吸器は、大きく2種類に分類されています。現在の医療機器では、胸郭外陰圧式の他に、主流となっているのが、気道内陽圧式による方法です。人工呼吸器によって、ガス交換を改善する事や呼吸仕事量を減らす事で患者の負担を和らげているのです。
患者さんの口元に直接、人工呼吸器から陽圧のガスを取り入れると、その圧力で肺を膨らませる事で、呼吸運動を行ないますが、胸郭が広がっていない状態の挿入は、肺損傷や横隔膜の筋力低下の原因を作る危険性があります。それを防ぐ為には、必要最小限の使用を心がける事です。
ガスの補給について
人工呼吸器には、空気と酸素がミキサーによって調合される事で高濃度の酸素を作り出しています。空気の中の成分には、酸素が約21%と窒素の割合が79%とで構成されています。患者さんに吸入される空気には、高い酸素濃度のガスが供給されます。このガスは、中央配管システムを利用してガスボンベやコンプレッサーによって提供されます。
空気の水分量に注意
空気中に含まれる水分は気体の状態で存在しています。回路内のガスは、ボンベや中央配管から供給されており、水分をほとんど含んでいないのです。このガスを吸い込むと、痰が粘り気を増して排痰が難しくなってしまいます。これによって、気道や肺に損傷を与える可能性が出てきます。
人工呼吸器の換気モード
2つの換気モードがあり状態を確認し、患者さんに合わせて使います。
1.強制換気モード
呼吸の管理を人工的に機器で全て管理する事で、呼吸の回数や換気量を、規定の範囲内で実行される仕組みです。
2.補助換気モード
自発的な呼吸を、患者の状態に合わせて補助する仕組みです。
※自発呼吸がない症状の重い患者さんには、強制換気モードから始めて自発呼吸が出来るようになると、補助換気モードに切り替えます。
まとめ
人体の構造を真似て、その仕組みを利用したのが人工呼吸器です。安全に仕様する為には、適量の空気を取り込んで酸素を補給する為に濃度や水分量など、調節する事で、人体に無理のない管理が行なわれます。機器の仕組みを理解した上で、患者の状態に合わせた使用が求められます。