ファイバースコープが医療に発展をもたらした
内視鏡の研究・開発により、患者さんに負担が大きかった胃カメラはその役目を終えました。現在では、胃カメラに変わって内視鏡ビデオスコープが主流となっています。では、現在の内視鏡の先駆けといえるファイバースコープについてご紹介しましょう。
胃カメラからファイバースコープへ
日本人は胃カメラというすばらしい診断機器を1950年に完成させました。胃カメラは日本人の器用さと相まって、早期胃がんの診断などに大いに力を発揮したのですが、リアルタイムで胃粘膜を観察できないもどかしさは、症例が増えるほどに募っていきました。
胃カメラでの検査が主流となりはじめた頃、米国では1958年に軟性鏡にガラスファイバーが組み込まれ、軟性鏡が曲がった状態でも画像伝達ができる、いわゆるファイバースコープの試作品を発表し、1960年には商品化されました。
日本では、既に胃カメラが普及していたため、医学的にも、経験値も豊富なことから、ファイバースコープはその後急速な発展を遂げることとなります。
ファイバースコープの原理
ファイバースコープは透光性のあるグラスファイバー内を、光が全反射を繰りかえし進むことを利用したもので、細いガラス繊維は、かなり屈曲しても折れることはありません。
個々のガラス繊維は屈折率の高いガラスを芯材(コア)とし、その表面を屈折率の低いガラス(コート)で被覆してあります。これは、隣接するガラス繊維が相互に触れると、光は隣のファイバーにもれるので、それを防止し、併せて傷や汚れを防ぐためです。
解像力はコアの直径、クラッド(コート)の厚み、各単繊維の配列法によって決まってきます。
コアの直径を小さくし、クラッド厚を薄くすることによって、イメージガイドの配列は密になり解像度は大きくなくなります。一方でクラッドを薄くし過ぎると、本来なら全反射すべき光なのですが、接触する隣の繊維へもれてしまう現象、いわゆるクロストークが起き、光量損失を招くと共に製造上の限度もあります。
ファイバースコープの目的
口から食道・胃・十二指腸、声帯を介して気管・気管支の内腔を、肛門からは大腸を観察することができます。また、粘膜の変化をみつけ、その粘膜の一部をつまみ取り(生検)、粘膜を構成する細胞の性格が良いか(良性)、悪いか(悪性=がん)を判定することが主な目的です。
もう一つの目的は検査だけでなく、早期のがんを発見し、その部分を内視鏡で切除するという治療する役割も担っています。
さらに進化する内視鏡
内視鏡検査は、胃カメラからファイバースコープへ、そして今ではカプセル内視鏡へと進化を遂げています。
カプセル内視鏡は、搭載されたCCDで1秒間に2枚の間隔で小腸内などを撮影し、無線機能によって画像を送信します。これによって、全長が6~7メートルもある小腸もくまなく画像観察ができるようになりました。
まとめ
オリンパスが開発した胃カメラから、ガラス繊維を活用したファイバースコープへと技術は進化を遂げ、さらなる内視鏡の開発・改良が進められています。患者さんの負担も減り、検査や治療を目的とした使用方法ができるようになりました。ファイバースコープが医療の現場に登場したことで、進化をもたらし負担の少ない検査を可能としたのです。