血圧計の感染対策について
SARSの世界的流行、新型インフルエンザ(A/H1N1型)パンデミック、そして新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行と、感染症で世界が脅かされる事態が続いています。患者同士で(院内)感染をさせないためにも、院内で頻繁に使用される血圧計は、感染対策としてどのような対処の方法があるのでしょうか。
医療関連感染の実情
1日で入院患者の約31人に1人が少なくとも1つの医療関連感染を発症しています。急性期病院での罹患率:ヨーロッパの病院では、毎日約80,000人の患者(18人に1人)が少なくとも1つの医療関連感染に罹患しています。
院内感染に罹患するリスクは集中治療室で著しく高く、患者の約30%が少なくとも1回は、罹患率と死亡率の高い院内感染を経験しています。また、米国では、毎年約200万人の患者が院内感染に罹患しており、このうち推定90,000人が死亡しているといわれています。
多くの異なる細菌ウイルス、真菌、寄生虫が院内感染を引き起こす可能性があることから、臨床医および研究者は、適切な感染対策を実施する必要があります。
不適切に処置された血圧計カフ
医療従事者が感染拡大に関与する可能性は高いのですが、その他にも、環境またはモニター、血圧計カフ、止血帯などの不適切に処置された器材から多剤耐性菌が移る可能性があります。
日本の病院において、綿棒およびガーゼで拭き取り法による汚染状態を確認する調査では、検査された血圧計カフに31.4%のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が検出されています。
このように、血圧計カフには、かなり多くの細菌の定着が確認されています。汚染されていたカフが観察されたのは、傷病者、内科、産婦人科、手術、内科、集中治療室となり、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌や肺炎桿菌などが検出されています。
血圧計の感染対策
感染症の拡大防止のために、血圧計本体ならびにカフの清拭・消毒は留意すべき事項で、詳細は、血圧計付属の取扱説明書を参照のうえ実施することが基本となっています。
感染対策のためには、1人の患者へ専用のカフを使用する場合があります。また、ディスポーザブルカフのように単回使用のカフですと、より安心して使用することができます。
患者が使用したカフを他の患者へ使用する前に、その都度洗浄化する方法がありますが、一般的に血圧計のカフは、粘膜と接触しないため「ノンクリティカル器材」に分類されていることから、低水準消毒(ただしウイルスへは一般に無効)やアルコールを用いた清拭が有効とされています。(新型コロナウイルスに関してはアルコール清拭が望まれます)
また、消毒をして後、測定をする際には、消毒薬が完全に乾いたことを確認し、使用することに注意しましょう。
まとめ
院内感染の罹患に血圧計のカフが大きく関係していたことは、大きく報じられることはないのですが、一般外来や入院病棟などで広く使用される血圧計は、それだけのリスクにさらされていることになります。感染対策をきっちりとし、感染拡大にならないよう心がけましょう。