MRIにおけるコイルの役割と種類について

生体現象測定記録・監視用機器

MRIが意味するのは、Magnetic Resonance Imagingという言葉の通り、磁石を使った医療機器です。磁石による静磁場には電波を発生させる装置が使用される為に、様々なコイルが必要となります。今回は、MRIにおけるコイルの役割と種類について紹介しましょう。

MRIの原理

人間の体内にある構成要素は、70%近くが水分によって構成されています。水分の他にも骨や脂肪などを構成する原子核に対して磁石の作用を受ける事で、それぞれの原子が元の状態に戻ろうとする時間差を信号によって捉えます。その信号を変換する事によって、画像処理が行われて体内の状態を見る事ができるのです。

MRIにあるドーナツ型の磁石の中では、電波を発生すると水素原子が共鳴します。電波を止めた時には、共鳴した水素原子から出る微弱な電波を捉える為に、コイルが必要となります。この場合のコイルは、アンテナの役割をしています。見たい部分に電波のアンテナとなる受信コイルまたは、RFコイルと呼ばれる装置を装着しています。

MRI装置では、電磁場とラジオ波によって画像データを収集しています。電波を送信すると共鳴信号でのラジオ波=RFパルスを増幅させて、装置に内蔵しているRF送信コイルによって、検査対象の組織に照射します。配置してある多数のRF受信コイルで、MRI信号を検出する事ができます。

MRI装置で使用するコイルの種類

RFパルスによって陽子を、元のエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態へと移行させる場合に、信号を受け取る為には、ラジオ周波数コイルが必要になります。この送信や受診を1つのコイルでも可能な場合がありますが、構造によって様々な種類のコイルが使用されています。

1.Volume coils(ヴォリュームコイル)
RFコイルとして、検査する対象と同じ大きさのコイルを必要とする事で、広範囲の検査ができるようになります。1つのコイルで送受信ができますが、撮像部位に合わせた専用コイル使用する事で、状態の良い画像が撮影できます。4タイプのコイルの形状があります。

2.Shim coils(シムコイル)
磁場には必ず不均一性が起こっています。装置内に搭載されている磁石に、磁場の均一性を保つようにする為に、電気的かつ機械的な調整をする為のコイルを使用します。

3.Gradient coil(傾斜磁場コイル)
主磁場に対して、負荷を与える為の電磁場を作り出す場合に使用する事で、全体の磁場を規則的に変化させる事ができます。この作用を用いる事によって、スライスの位置を決める場合や、空間情報を取り出す事を可能にしています。

空間を作り出す3次元の情報を受け取るには、必然的に3組の傾斜磁場コイルが配置されます。1組ごとに1次元の情報を確保しますが、コイルを作動させるとつなぎの部分に対して大きな衝撃が発生します。この揺れを伴う衝撃が、MRI検査中の「トントン」と言う音が鳴る原因となっています。

4.Surface coils(表面コイル)
検査を行う部分の位置に直接配置されるコイルの事で、頭には頭専用、足には足専用として、配置する場所に合わせて形状が異なっています。コイルを配置した近くにある組織から信号の受信を行います。体内の中心部から離れていると信号が届きにくい特徴があるので、体格の大きい人の場合は、画像が乱れやすくなります。

まとめ

MRI装置で使用するコイルには、それぞれの役割を果たす事で、正確な検査を行う事ができています。コイルの役割である送受信以外にも、磁場が作り出す環境に応じて、それぞれに必要となるコイルが作用する事で、MRI装置に必要な画像データを提供する事ができています。

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