呼吸器疾患に対する体外式人工呼吸器の貢献

生体現象測定記録・監視用機器

昨今コロナウィルスの影響による肺炎患者の増加で、医療現場は危機的な状況にあります。体外式人工呼吸器が登場し、ある有名なタレントが感染した際はエクモ(体外式膜型人工肺)が使用されました。取り扱うことのできる技師が不足している状況にありますが、体外式人工呼吸器などはどういったメカニズムで動作しているのか? どんな症状の患者に有効な医療機器なのか? といった観点から解説していきます。

人工呼吸器の導入条件と呼吸管理

血液に酸素が取り込めてない状態のことを呼吸不全と呼びます。PaO2(動脈酸素分圧)が
若年健康者なら100Torr(mmHg)、老年健康者で約80Torrになります。PaO2が60Torr以下の場合、呼吸器に異常をきたしており、それと組み合わせてPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)の値で症状のタイプを判別します。

PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)は35~45Torrの場合、1型呼吸不全、45Torr以上の場合は2型呼吸不全と呼びます。呼吸困難の状態が1か月未満だと急性呼吸不全、1ヶ月以上続く場合、慢性呼吸不全に分類されます。

1型呼吸不全

病態として、換気血流比不均等、肺内シャント、拡散障害、吸入器酸素濃度低下が挙げられます。呼吸管理として吸入酸素濃度を上げる方法が取られます。

2型呼吸不全

病態として、肺胞低換気が挙げられます。人工呼吸で呼吸を深くし、二酸化炭素の排出量を増やす必要があります。

陽・陰圧体外式人工呼吸器(RTX)

従来の人工呼吸器は気管内に管を入れなければ2型呼吸不全に対応できませんでしたが、陽・陰圧体外式人工呼吸器は挿管や気管切開を行わずに呼吸管理の可能な人工呼吸器です。

キュイラス(胸当て)を患者に装着し、圧力をかけることで直接横隔膜を動かします。排痰を促すクリアランスモードも搭載されており、肺炎の予防も行えます。

体外式膜型人工肺(エクモ)

重症化した呼吸不全者に対して使用される生命線的な装置で、直接患者の血管に酸素を注入する装置です。

エクモを使用することで、完全に肺停止した状態でも生命維持が可能で、遠心ポンプで静脈から抜いた血液を「人工肺」に送り、人工肺内で血液に酸素を供給し二酸化炭素を取り除いた後、体内に戻します。

運用課題として、熟練したスタッフが20人近く必要になることと、強制的に血液を循環させるため脳出血といった合併症が引き起こされる可能性があることです。

まとめ

酸素は23回も枝分かれする気管支を通り肺胞に達します。適切な人工呼吸は、酸素を送り込み二酸化炭素を排出する「換気量」を増やすことが重要になります。体外式人工呼吸器などが発達してきたことで、生理的な呼吸に近づき心臓といったデリケートな手術後の管理が楽になり、切開からの管の挿入というような患者の体に負担もなく換気量を増加させることが可能になってきました。

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