心臓の仕組みと関係する心電図の基本
体の機能の中で全体に影響を与える臓器「心臓」ですが、今回はその仕組みと基本的な心電図の役割などを見ていきたいと思います。知っている人も知らない人も、今一度確認してみましょう。
心臓と心電図の関係
心臓はほとんどが筋肉で構成されており、その動きは身体全体へ血液を送り出すポンプの役割を果たしています。血液に含まれるエネルギーや酸素を取り込んで送り出し、リサイクルした不要な二酸化炭素などを排出します。それによってクリーンな血液にして、再利用する事の繰り返しで成り立っています。
動脈と静脈の違い
わかりやすく分類すると心臓に向かう血管が「静脈」であり、心臓から放出するのが「動脈」です。
1.大静脈は、全身から心臓に戻ってくる血管の事です。
2.肺動脈は、心臓から肺へ送り出す血管の事です。
3.肺静脈は、肺から心臓に向かう血管の事です。
4.大動脈は、心臓から全身に送り出す血管の事です。
血管の流れ
心臓は4つの部屋で構成されています。
1.全身から右心房へ
2.右心房から右心室へ
3.右心室から肺へ
4.肺から左心房へ
5.左心房から左心室
6.左心室から全身へ
心電図との関係
収縮と拡張を繰り返す心臓は電気信号を発しており、脱分極である活動電位と再分極である静止電位の現象を繰り返している状態を、心電図による波形で表す事ができます。
心電図の基本おさらい
心臓の電気活動を通じて波形で表す場合、脱分極と再分極を繰り返す一定の期間を周期で示しています。これを理解する為にそれぞれの波形に名前が付けられており、個々の状態で正常化か否かの判断材料になるわけです。
【1.P波とは】
収縮する事で心房の興奮状態を示すもので、グラフに表すと小さな高さになります。この場合大きくても0.25mVであり、それ以上になると心臓の異常を数値で表します。心房筋の脱分極の始まりから終わりまでを幅が示しています。この時幅が広い場合は、時間のかかり過ぎとなり異常となります。
【2.QRS波】
心室が興奮する脱分極を意味しています。ヒス束や脚とプルキンエ線維の経路を通じて伝導する事で、素早く脱分極が完了する事ができて短時間でQRS波が終了するのが正常な範囲です。
【3.T波】
心室が拡張する状態の場合に再分極が行われます。QRS波の終わりの部分に対してST接合部と呼び、そこからT波の始まりがST部分になります。
【4.PP間隔】
心房の興奮開始を軸にして、次に開始するまでの間隔を時間で表しています。心房の興奮は洞結節から発しているので、PP間隔と同じ意味を持ちます。
洞結節とは、心臓の拍動が右心房の壁から発電の役割をしています。つまり電気信号の発生で脱分極が始まり、次の脱分極の始まりまでの時間を意味します。これを、洞周期と呼びPP間隔と同じ意味になります。
【5.PQ間隔】
P波の開始からQRS波の開始までの間隔で表示します。間隔が狭まくなる状態だと、房室間の伝導が速い事を示し、間隔が広くなる状態では、伝導が遅くて時間がかかり過ぎている事になります。
特殊な場合を除いて、短い場合は問題になりませんが、長い場合に異常と判断できます。0.20秒以内を正常として、それ以上の数値は異常となります。
【6.RR間隔】
QRS波から始まり、次のQRS波までの間隔です。それは心室興奮から次までの心室興奮までを表現します。普段は規則正しく活動しており、心室の興奮周期であるRR間隔が判明する事で、心拍数の計算が導き出せます。
心拍数は心室が1分間に収縮する回数であり、60回/分になります。これにより、50回/分未満を徐脈として、100回/分以上の場合を頻脈と判断します。
【7.QT時間】
QRS波の始まりからT波の終了までの間隔は、心室の再分極が終了するまでの時間を反映しています。脱分極から始まり、再分極までの到達時間を意味します。これは、RR間隔に依存して変化しており、RR間隔が長くなる事で影響を受けたQT時間も延長する事になります。
【8.U波】
T波の後に起こり、P波の前の小さく緩やかな形状を示す心室起源の波ですが、正常では見られない場合が多いようです。
まとめ
心臓の仕組みと心電図の関係を見ていきました。基礎的な部分とそれぞれの役割を理解する事で、心臓の機能が心電図に影響を及ぼす結果を、波形にて反映させている事がわかります。