MRIとX線の違い ~その性質や得意分野について~
MRIとX線は、人間ドックやケガ、または病気になった際にお世話になる医療検査に使用されるものです。両者の違いによって、それぞれの得意分野があります。今回は、MRIとX線の違いに着目して見ていきましょう。
MRIとは
MRIは磁力と電波の力により、人体のあらゆる部分の断面像を撮ることが出来る画像診断の装置です。Magnetic Resonance Imagingの略で磁気共鳴画像という意味です。人間の全身を検査できます。非常に精度の高い検査を行うことが可能であり、病気の形態が分かるだけでなく、その詳細な部分や形状の判断にも使用されます。
この装置は言ってみれば、穴の空いた大きな磁石と考えて頂くと良いでしょう。原理としては、人間の体を構成する水素原子の小さい磁石として働くような性質を用いて、様々な画像が取れるというものです。
X線とは
X線は電磁波の一種であり、紫外線や赤外線といったものの仲間になります。光は物があるとさえぎられその先に行くことは無理ですが、X線は波長が短いので、物を構成する電子や原子核を通過することが出来ます。
この作用が透過作用と言われ、レントゲン写真や非破壊検査(異物検査や※入味検査などのX線検査装置)に応用されています。
※入味検査とは内容物の数量や有無、液量などを検査することです。
その性質についてX線の性質について列挙します。
・波長が短いために物質を通過する性質を持っている。ただ密度が高いものは透過しにくい。また厚みがあるものも透過しにくい。
・化学作用(写真の感光)がある。
・人間の五感では感じられない。
両者の検査方法の違い
それぞれの検査を見ていきましょう。
【MRI検査】
通常、患者さんは筒型(奥行方向に170cm程度)の機器の中で寝て頂くだけで、痛みなどはないです。胸部や腹部の検査では、少し息を止めて頂くことを繰り返すことがあります。検査によっては造影剤を注射することも場合によりあります。検査にかかる時間は検査内容によっても異なり、30分~1時間程度かかる検査もあります。
この検査を受けるときの注意ですが、磁場の中で行う検査ですので金属類などは外し、着替え検査衣になって頂きます。体の中に金属がある方は事前に申し出る必要があり、心臓ペースメーカーや刺青のある方は原則として検査が出来ません。加えて、妊娠の可能性を持っている方も申し出を要します。
【X検査】
X線の性質を利用した装置は、医療世界だけでなく工業世界でも広く応用されています。医療では、様々な用途に応じてX線装置があります。ここでは人間ドックで行う様な検査を挙げてみます。
X線検査(レントゲン検査)は全身に対して行われます。単純撮影では骨の異常や胸部・腹部臓器の異常などに用いられ、造影剤を活用した透視撮影による血管や消化管の異常などを見る検査もあります。
更に、X線CT装置というX線の透過力を向上させた最先端システムなどもあります。ここでCT検査について触れてみます。
X線の一種で、レントゲンに高性能コンピューターを組み合わせて、詳細に検査が出来る医療機器です。人体を輪の形にしたような切り口の画像、及び立体的な画像を見ること出来ます。
それぞれの得意分野
MRIとX線CTのそれぞれ得意なものがあります。両者の医療機器の特性や性質から得意とするものを挙げます。
【MRIの得意分野】
・脳動脈瘤
・骨折などの外傷または歯について
・内臓(肝臓、胆のう、膵臓、腎臓)
・早期脳梗塞
・血管
・軟骨
・神経
・靭帯や半月板
・子宮や卵巣
・前立腺や膀胱
・骨腫瘍
などの検査にその威力を発揮します。
【X線CT装置の得意分野】
・尿路結石
・内臓
・脳出血
・肺ガンや肺炎
・全身の緊急検査(短時間で撮影出来る)
・腸閉塞や腸炎
などの検査に向いていると言えます。
まとめ
MRIやX線とは何か?やそれぞれの性質の違いについて見てきました。断層画像という点では、どちらもよく似た画像を得ることができますが、MRIとCTは異なる物質の物理的性質に着目し撮影される方法です。