手術台に使われる照明(無影灯)について
手術室で手元を綺麗に映せる照明は絶対必要なものです。手術で一般的に使用されている照明を無影灯と言い、ドクターやスタッフの影、手術器具で光源が塞がれないよう、術野の全体に影がでないように作られています。
影をつくらない無影灯
手術での照明の大切な役割は術野をはっきりと映し、よく見える事です。ドクターやスタッフの影、手術器具で光源が塞がれないよう、術野の全体に影がでないように作られている照明器具を無影灯と言います。
白熱灯からLED型へ
一昔前、手術用の無影灯といえば白熱電球がメインでした。自然光に一番近いからですが、白熱電球は多量の熱を発しますし、寿命も短くメンテナンスが大変でした。近年LEDの高性能化が進み、明るくて寿命も長く、軽い上に調光も楽に行えるようになったため、現在はほとんどLED型に移り変わってきています。
見えやすく疲れにくい照明
照明が明るすぎると眩しくなり、暗すぎると見えづらく即判断をしにくくなります。スポットライトのように一点だけ明るくしても、明るい所から暗い所に目線を移すと、目の暗順応・明順応の作用でしばらく見づらくなり非常に疲れやすくなってしまいます。手術は長時間に及ぶ事も多いため、「長時間でも見やすく疲れにくい照明」が理想的です。
明るい、調光、操作性
術野に楽に光焦点を当てられるアームやコントローラーを含めた操作性も大切です。そのため、手術で使用する無影灯に求められるのは「明るいけれど眩しくない事」「調光」「操作性」です。
明るく強力なLED型無影灯
患者に圧迫感を与えないため、光源を患者の視線上から見えない位置に置かなければならず、必然的に照明と術野の距離が離れてしまうため、明るく強力な光が必要になってきます。
明るさの基準はルクス(lux、lx)になっており、近年は10万ルクス以上ある高性能のLED型無影灯が多くなってきています。光焦点も楽に行えるため、術野を強力に照らす事ができます。
色味の数値 ケルビン(K)
色を正しく出すために、できるだけ人体や血液が綺麗に見える色 3500K~4000K前後に調整されている無影灯が多いようです。K(ケルビン)=色温度の事で、3500K~4000Kは赤みがかった色が綺麗に見えます。
演色評価数 Ra
演色評価数(単位はRa)は対象に光を当てた時に色がどのように見えるか数値化したもので、太陽光を基準として、それに近いほど数値が高くなるようになっています。最大値が100で、数値が高いほど自然光(太陽光)に近く「演色性が良い(高い)」とされています。
特殊演色評価用試験色
基本色(Raはこの平均値です)R1~R8、特殊演色評価用試験色R9~R15があり、R9が赤(血液の色)を基準にしており、R9の数値が高いと肌の色味(血管)がよく見えるようになります。
日本・アジア系の黄色人種はR15、国によっては白人、黒人など人種に合わせた数値に合わせて調光されている無影灯もあります。
まとめ
近年はLEDライトも高性能化が進み、頭に装着して簡易モニターを見ながら術野に光を当てられるカメラ付きウェアラブルの無影灯も出てきています。医療現場では楽に集中して手術ができるよう無影灯も進化していくでしょう。