麻酔器の余剰ガスはどの様に排出されるのか?
医療機関で患者を手術する際、欠かせない装置が麻酔器です。麻酔は手術を受ける患者の不安や痛みを和らげ、手術を安全に遂行するためになくてはならない物です。今回は、その麻酔に使われる麻酔器の構造と、麻酔器を使用する際に発生する”余剰ガス”の排出の仕組みについて解説します。
はじめに
麻酔器とはどういうものかを、おさらいしましょう。麻酔器を構成するのは、主にガス供給部と呼吸回路部とモニタリング機器の3つのユニットです。この内、ガス供給部で生成された麻酔ガスが、呼吸回路部を介して患者の体内に入ります。呼吸回路部は人工呼吸器としての役割も担っており、患者の呼気と吸気を循環させています。
余剰ガスとは?
前述のガス供給部で生成された麻酔ガスは、酸素・亜酸化窒素・空気・セボフルラン・デスフルランなど、揮発性吸入麻酔薬が混合されてできた物です。麻酔ガスは呼吸回路部の吸気弁を通って患者の体内に入ります。
患者の呼気では吸入した酸素が二酸化炭素に変わっていますが、亜酸化窒素・セボフルラン・デスフルランは代謝されない為、大半が呼気として排出されます。
呼気の中に残っている吸入麻酔薬を再び利用する為に、患者が排出した呼気は二酸化炭素吸収装置へ送られ、再度、吸気側へ循環します。これには先ほど述べた通り、酸素が無くなっている為、再びガス供給部から酸素が足されます。
その際、酸素だけを足して、吸入麻酔薬の濃度が下がってしまう事を避ける為、麻酔ガスも同時に足します。しかし、麻酔ガスを足し続ければ患者に有害となってしまう為、麻酔ガスを足す前に一旦、余剰ガスを排出する必要があるのです。
余剰麻酔ガス排出装置とは?
病院には、様々な医療ガス設備があります。余剰麻酔ガス排出装置もその中の一つです。
手術で麻酔器を使用する際に、麻酔器より排出される”余剰ガス”を手術室内に放出するのではなく、圧縮空気、又はブロワーポンプを利用して吸引し、室外に安全に排出する設備が余剰麻酔ガス排出装置です。
地球環境への配慮
室外へ排出される余剰ガスには、亜酸化窒素が含まれています。この気体は地球のオゾン層を破壊する効果があるため、国際的な枠組みである京都議定書で排出する事を規制されています。医療目的で使用した亜酸化窒素に関しては京都議定書の規制外となっていますが、地球環境への影響を考え、麻酔ガスに亜酸化窒素を用いない医療機関も段々と増えています。
患者の呼気の中に含まれるのは亜酸化窒素だけではなく、吸入麻酔薬やセボフルラン、デスフルランも同様です。これらを循環させ、再度吸気させているのは、なにも医療機関としての経費削減の為だけではありません。大気中に放出される余剰ガスを少しでも減らそうと配慮しての事です。
患者の命を最優先に考えつつ、地球環境への配慮も求められる時代に来ていると言えます。
まとめ
今回は、手術に欠かせない麻酔器と、麻酔器を使用した際に生じる余剰ガスについてお伝えしました。