基礎から踏まえる、脳波計のメカニズム

生体現象測定記録・監視用機器

人間の意識や行動をコントロールする臓器に相当する脳。その状態を判別するために行われるのが脳波検査であり、その際に現在一般的に使用されているのが脳波計です。脳波とはどのようなものであり、その計測はどのようなメカニズムで行われるのか、見ていきましょう。

脳波とは

人間の脳は、約1000億個もの神経細胞で構成されています。それぞれの大きさは5~100μmほどであり、互いに樹状突起や軸索といった器官で結合しています。その間を電気的信号が相互に行き来することにより、脳が活動します。その電気的反応が脳波です。検査ではその状態を判別することにより、脳の機能について調べることが可能となります。

脳波検査の概要

脳波計を使用した検査では、被験者の頭部21箇所に電極を取り付ける10/20法という手法が用いられます。それに基づいて電極は、耳付近の耳朶を含む範囲で頭部を覆うように配置されます。それら電極から検知される信号を幾通りものパターンで組み合わせることで、様々な視点や方向性から脳内の神経細から生じる電気信号の動向を調べることが可能となるわけです。

そのようにして得られた検査データは、縦軸方向を電位差・横軸方向を時間としたグラフ上に、波形として描写されます。脳波はこのような流れで判読可能な状態で表され、診断材料となるわけです。

脳波計を構成するメカニズム

グラフ上に表される脳波は、その電位差が数値的に数100μV以下で推移することから、極めて微弱な電気信号であることが窺えます。微弱さゆえに外部の環境中に存在する電磁波や、脳以外の人体から発される電気反応の影響を強く受けることとなります。

このため、電極から検知される電気的なデータをそのまま用いたとしても、それが脳活動を表す電気反応とは言えません。脳以外に由来する外部的ノイズ、すなわちアーチフェクトを除去しなければならないわけです。

脳波は交流波形として現れ、それに作用するアーチフェクトも交流雑音として影響を及ぼします。そのため脳波計には、交流雑音に対処するための仕組みがなされているわけです。
具体的なメカニズムとしては、差動増幅器や周波数フィルターといった機構が利用されています。

差動増幅器は、電位差すなわち脳波における縦軸成分に干渉してくるノイズへ対処する役割を担います。額に位置するニュートラル電極をノイズ検知用として扱い、ここから得られる信号を波形的に逆転させた逆相とし、観測用の電極から得られる検査データ用の信号と相殺させます。そうすることによってノイズに起因する電位差要素が除去され、脳波に由来するデータのみが残るというわけです。

周波数フィルターは、波形の周波数に関与するノイズを抑制するべく使用されます。波形に現れる波は振幅1つをセットとして数えられ、周波数は一秒間に現れる振幅1セットの数を意味するものです。

周波数フィルターは、周波数の上限と下限を設定する電子回路であり、これにより検査データとして用いられる脳波の周波数範囲を設定できます。これまでの研究により、脳波各種類における周波数は判明しているため、その範囲外にある成分はノイズとして取り除かれるとうわけです。

まとめ

以上のように、脳波計の基礎的部分を踏まえながら、脳波計に備わっているノイズ除去のメカニズムとして、差動増幅器と周波数フィルターが用いられていることを確認してまいりました。

検査に使用する機器に精通することで、よりレベルの高い医療体制の実現に寄与するものと言えます。

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