レーザーメスを使った手術や治療

治療用機器

レーザーメスは金属製メスのように切開や治療が行える医療機器で、出血や感染症のリスクを抑えるという利点があります。今回はレーザーの特性やレーザーメスを使った手術、治療などについてご紹介します。

レーザーの特性

レーザーの特性を普通の光と比較する形で以下に解説します。

〇単色性
太陽光をプリズム(ガラスなどの透明体の三角柱で光を屈折、分散させるもの)に通すと7色の光に分散されます。それに対してレーザーは単一波長のため、分散されることがありません(1色)。

〇指向性
通常の光源はあらゆる方向に分散します。車のライトをイメージすると分かりやすいかもしれません。それに対しレーザーは直進しほとんど広がりません。

〇コヒーレント(干渉性)
コヒーレントとは2つの波動が互いに干渉しあう性質を持つ事をいいます。レーザーはこの干渉性があり、波長の波が規則正しく揃っている光が出せます。自然光にはこのような性質はありません。

〇エネルギー密度
たとえば太陽光をレンズに通して光を収斂(しゅうれん)させても、焦点に鋭く光を集めることができません。それに対しレーザーは位相(周期的に変動する波の位置情報)がよく揃い、収束性も優れています。そのため焦点温度を数万度まであげることも可能になります。

レーザーメスとは

レーザーメスとは上記の特性を生かし光の熱エネルギーを使って、皮膚の切開をしたり患部の治療を行ったりする医療機器です。レーザーメスを使うと出血量を抑えられると言われるのは、組織が切開されると同時に組織の血管が熱で凝固する(出血が止まる)からです。

レーザーメスを使った手術・治療

レーザーメスにはいくつか種類があります。それぞれの特徴とその特徴を活かして行われる手術や治療を以下に紹介します。

〇炭酸ガスレーザー
水に反応する(吸収される)という特徴があり、熱は組織の表面でほぼ吸収されます。熱が組織の深部まで到達しないため安全性が高いというメリットがあります。

炭酸ガスレーザーは形成外科などで、イボやホクロの除去手術などに使われます。レーザーを患部に照射すると細胞に含まれる水分がエネルギーを吸収し、蒸散作用を起こします。これにより瞬間的にホクロやイボの組織が除去されます。

ほかにも歯肉切開や歯肉炎などの歯科治療に使われたり、動物病院では去勢や避妊・ガンなどの手術に使われたりします。

〇Nd:YAGレーザー(ネオジウムヤグレーザー)
ネオジウムヤグレーザーは色に反応するため、皮膚の色素性病変の治療などに使われます。他にも歯肉切除など歯科治療にも使われます。水に反応(吸収)されにくく熱が組織の深部に到達するため、使用の際は十分な注意が必要です。

〇Er:YAGレーザー(エルビウムヤグレザー)
水への反応(吸収)が極めて高いレーザーです。ホクロの除去や老人性イボなどの皮膚良性腫瘍の治療などに使われます。また細菌を原因とする虫歯や歯周病治療にも使われます。

まとめ

レーザーメスは刃物のメスのように切開ができたり、治療ができたりします。また患部に直接触れることもないため感染症のリスクも抑えられます。熱傷に十分な注意が必要ですが、それぞれの特性を知り手術や治療目的に合わせたレーザーを使い分けましょう。

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