レーザーの基本原理とレーザーメスの種類

治療用機器

医療の現場におけるレーザーメスを始め、様々な用途で活躍するレーザー。それは一体どのような原理に基づくものなのでしょうか? そして、医療の現場でレーザーメスとして使用される機器の種類にはどのようなものがあり、それぞれどのような特徴を持っているのでしょうか?詳しく解説します。

レーザーの基となる「光」とは

レーザー光線をその範疇に含む「光」は、電磁波の一種です。電磁波は空間を伝わる波の事を指し、水面を伝わる波紋や空気の振動である音と同じように、周期と周波数を持ちます。

周期とは波の山と谷1セットすなわち振幅一回における時間を指し、周波数は1秒間に波が幾つ生じるのかを意味する物理量です。光すなわち電磁波は文字通り光速(1秒間に約30万km)で進み、これを振動数で割ることにより、1周期における長さが算出されます。そのようにして導き出された物理量を波長と言います。

電磁波の特徴は、波長の長短によって電波・可視光線(人間の視覚で捉えることができる光)・放射線など、性質が異なるものに区別できます。波長が短くなっていくにつれて、電波→赤外線→可視光線→紫外線→放射線、という形態に変わって行きます。レーザーメスが有する波長は、総じて赤外線や可視光線の範囲に属します。

レーザー発生の仕組み

太陽光など、自然界に存在する光は、進む向き・波長・位相(波の山と谷)という3つの要素がバラバラな状態です。これら3つの要素を一致させた光がレーザーとなります。レーザー化された光は通常よりエネルギーが高まります。医療用レーザーメスでは、その熱エネルギーによって手術などの切開がなされているというわけです。

レーザーは、原子が外部からエネルギーを吸収した際に生じる励起(れいき)状態を原理として応用して作られます。励起状態になった光は、直ちに同等のエネルギーを外部に放出し、それが他原子に励起状態を及ぼすという流れで連鎖的に広がっていきます。それによって外部に放出されたエネルギーは光に相当し、これを集積させることでレーザーとなります。

レーザーを放つ発振器は、媒質となる物質・励起源・光共振器としてのミラーなどから構成されています。励起源から発された光が媒質に当たると、媒質内に励起状態が発生し、誘発された光がミラーによって反射を繰り返します。こうして光の向き・波長・位相という3要素の一致が果たされ、レーザーとして外部に放たれる仕組みとなっています。

レーザーメスの種類と性質

医療に用いられるレーザーメスには媒質の違いにより、以下のような種類に分類されます。

炭酸ガスレーザー

媒質にガス状のCO2を用いたタイプです。波長は10600nmであり、遠赤外線に属する電磁波によるレーザーとなります。水に吸収されやすい性質を持ち、出力が大きいことから皮膚に使用した場合に跡が残るリスクがあります。美容外科の分野においてのホクロ除去や、歯科治療の分野でも使用されます。

Nd:YAGレーザー

3種の物質(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)で構成された結晶の生成時に、イットリウムを数%のネオジウムで添加したタイプを媒質とするレーザー。水に吸収されにくい特徴があり、比較的深部の治療で使用されます。波長1064nmの赤外線から成るレーザーです。

ダイオードレーザー

半導体から発される光をレーザーに使用したタイプ。患者さんへの痛みを比較的抑えながら治療が実施できます。波長は810~950nm、近赤外線に属します。

ルビーレーザー

ルビーを媒質としています。皮膚や血管には吸収されにくく、メラニン色素に吸収されやすい性質があり、それを活かしてシミ・ソバカスの除去などに用いられます。
可視光線に属し、波長は694nmです。

色素ダイレーザー

色素溶液を媒質として用いています。使用する色素を変化させることで、可視光線から近赤外線までの波長を扱うことが可能です。血管腫や毛細血管拡張の治療などで使用されます。波長は585nmです。

まとめ

今回は、光の3要素を同一としたレーザーについて、励起状態を応用した発生原理や、レーザーメスに用いられる種類それぞれの特徴についてお伝えしました。治療に際しては、その内容に適したタイプのレーザーを使用することが肝要です。

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