水銀血圧計・水銀体温計は製造・使用禁止?その背景を簡単に解説

生体現象測定記録・監視用機器

これまで使用されてきた水銀血圧計・水銀体温計は、 2021年1月1日以降の製造・輸出入が禁止されています。

すでに所持している水銀血圧計・水銀体温計は引き続き使用することができますが、廃棄するときには廃棄物処理法に従って対応することが必要です。

そこで、水銀血圧計・水銀体温計とは何か、製造・使用が禁止された背景について簡単に解説していきます。

 

水銀血圧計とは

「水銀血圧計」とは、腕帯に圧力がかかることにより、ガラス管の水銀が上に押し上げられた程度によってその高さを測る仕組みの血圧計です。

腕にマンシェットを巻いて空気を送り、聴診器を大動脈の触れる位置にあてたときに聞こえるコロトコフ音で収縮期血圧と拡張期血圧を測定します。

血圧の測定方法をまとめた場合、以下の3つです。

①垂直に水銀血圧計を設置する

②マンシェットの空気を完全に抜いてゴムの中央が上腕動脈にかかるようにマンシェットの下縁が肘窩2~3㎝上になるように巻く

③肘関節を伸展させて測定部位の高さを心臓の高さに合わせて測定する

 

水銀血圧計の問題点

「水銀血圧計」は聴診器を使ってコロトコフ音から数値を測定するため、仮に医師や看護師による場合でも熟練の度合いなどで誤差が生じやすいことが問題といえます。

さらにコロトコフ音は腕の太さなど、人それぞれであるため聴き取りにくいこともデメリットです。

急変のときやショック状態では血圧が低くなることもあり、もともと拍動が弱い方の場合には上腕動脈のコロトコフ音を聴取できないこともあります。

以上のことや、圧力を物理的や機械的なメカニズムのみで示すこともあり、血圧測定においては水銀式ではなく電子式が推奨されるといえます。

電子式の血圧計であれば、電子回路の働きを利用するため一般の方など誰が使用しても正確な測定が可能です。

 

水銀血圧計は危険?

水銀血圧計や水銀体温計などに含まれている金属水銀が、消化管などから吸収されることは極めて少ないといえます。

仮に体温計1本分の水銀を誤食した場合でもほぼ無毒なので、2~3日たてば便として体外に排泄されるため、危険とはいえません。

ただ、壊れた水銀血圧計や水銀体温計から流出し、散らばった水銀を放置すれば揮発して蒸気として吸入されてしまい、毒性を発現してしまいます。

水銀蒸気を吸入すると、その70~80%が吸収されてしまうため高い濃度で肺に沈着することは十分注意しておきましょう。

 

水銀血圧計が禁止された理由

水銀の採掘・使用・廃棄に関して扱いが問題となっているため、2013 年に「水銀に関する水俣条約」が採択され、世界各国で条約発効に向けた準備も進められています。

条約発効に伴って2021年以降は、水銀を使用した機器の製造・輸出入は原則禁止されるという流れになりました。

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