心電図だけでは不十分?心臓電気軸について

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【はじめに】
心筋の興奮によって生じた電気信号が発端となって起こる心起電力は方向性と大きさを有していてベクトルとして表現されることがあります。また、この心起電力のベクトルの方向にあたる部分は「心臓電気軸」と呼ばれています。
今回心電図検査の中でもより複雑とも思われる心臓電気軸の内容についてお伝えしていきたいと思います。

【心臓電気軸とは】

心電図は心筋の興奮によって生じる電気信号を記録したものになりますが、心臓電気軸とは簡単に言うと心臓の周りを3種類の回転軸で表現したものということができます。
基本的には前後軸、左右軸、心臓長軸の3種類の軸になります。

【QRS軸とは】

3種類の回転軸の中でも心臓電気軸については通常前後軸のことを意味することが多く、また心電図の波形でいえば一番大きな波形になることの多い「QRS軸」のことを一般的に「心臓電気軸」と呼びます。この理由としては心室からの興奮を波形としてとらえたQRS波が心起電力の中で最も大きく臨床的意義もあると考えられているからです。

【QRS軸にもいろいろある】

QRS軸の構成要素には、QRS平均ベクトル・QRS初期ベクトル・最大ベクトル・瞬時ベクトル・周期ベクトルなどがあります。
QRS電気軸という意味合いではQRS平均ベクトルのことを指すのが普通とされています。また、このベクトルを端的に言えば、QRS波の面積ベクトルということもできます。

【左軸偏位・右軸偏位がきたす病態とは】

先ほど紹介した「前後軸」で左側に回転しズレている場合には左軸偏位、逆の場合は右軸偏位であるということができますが、両者のケースでみられる病態というものが違って存在していて、以下その病態について紹介してみたいと思います。

・左軸偏位の場合の病態
左脚前枝ブロック:高血圧、二次性心筋症、突発性心筋症、心筋梗塞、狭心症
左室肥大:大動脈炎症候群、大動脈縮窄、三尖弁閉鎖
水平位心:肥満、妊娠、腹水、腹部腫瘍
下壁梗塞、肺気腫など

・右軸偏位の場合の病態
垂直位心:無力性体質、滴状心など
右室肥大:肺高血圧症、僧帽弁狭窄、肺動脈狭窄など
肺性心:肺梗塞、閉塞性肺疾患
側壁梗塞、広範前壁梗塞など

【まとめ】

いかがでしたか?
今回紹介したような心電図のQRS軸の正常値などは年齢などの条件によっても変化してきます。また今回紹介できない部分もありましたが軸偏位(軸の傾き・ズレ)を算出する方法も存在しています。ぜひ参考にしてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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