在宅酸素療法と在宅人工呼吸器療法について
はじめに
動脈を流れる血液に含まれる酸素の量が低下した状態を呼吸不全といいます。
このような状態が1ヶ月以上に渡って続いているものは慢性呼吸不全と呼ばれ、間質性肺炎や、たばこの煙などが原因になることで有名なCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、あるいは結核の後遺症などにより生じることが知られています。
このような症状の治療法として用いられるのが在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法です。
それぞれがどのようなものなのか、以下で詳しく見ていくことにしましょう。
在宅酸素療法
通常、大気の中に含まれる酸素の濃度は約20%です。
もちろん、健康な人ならこの濃度で問題が生じることはありませんが、慢性呼吸不全を患っている人の場合、この程度では血液中の酸素量を十分に高めることができません。
そこで酸素を吸入する必要が生じてくるのですが、特別な装置を用いれば入院していなくても在宅で行うことができます。
これが在宅酸素療法といわれるもので、装置から伸びたチューブを鼻にあて酸素を吸入します。
装置には、空気中の酸素を濃縮するタイプのものと、タンクに入った液化酸素を気化するタイプのものがありますが、ほとんどのケースでは前者のタイプが使用されています。
また、最近では小型軽量化された装置も開発されており、充電さえ行っておけば長時間に渡る外出もできるようになってきました。
なお、在宅酸素療法や次に説明する在宅人工呼吸器療法は、一定の基準さえ満たせば健康保険が適用されます。
在宅人工呼吸器療法
慢性呼吸不全で症状が進行すると、酸素が足りなくなるだけでなく、二酸化炭素の排出も不十分となり、身体内に残ることとなってしまいます。
このような状態になると、酸素を供給するだけでなく二酸化炭素の排出も補わなければなりません。
このために行われるのが在宅人工呼吸器療法です。
もともとの在宅人工呼吸器療法は、神経や筋肉の病気で十分な呼吸をすることが困難な患者さんに対して、気管を切開しチューブを挿入する方法(TPPV)が用いられてきました。
しかし、その後、患者さんの体にメスを入れることなくマスクを使って行う方法(NPPV)が開発され、神経や筋肉の病気の患者さんだけでなく、慢性呼吸不全の患者さんにも用いられるようになってきているのです。
最後に
最近では、患者さんの呼吸パターンを学習し、そのパターンに合わせてスムーズな圧力で呼吸を補助する人工呼吸器(ASV)も開発されています。
このASVは、心臓の機能改善に対する効果が報告されていることから、慢性呼吸不全で心不全や循環不全を合併している患者さんの在宅人工呼吸器療法としても使用されるようになってきています。