安全に使用する為に理解したい ~麻酔器のモニター機器について~
麻酔器の構造を大きく分けて説明すると、「ガス供給部」から麻酔を注入して「呼吸回路部」で患者さんの呼吸を機器が調整することで呼吸を助け、それらを「モニター機器」で監視を行う仕組みです。今回は、麻酔器のモニター機器を安全に使用する為の理解についてご紹介します。
呼吸系のモニター機器の使用
呼吸のモニタリングを行う場合には、以下の項目を観察します。モニタリングの種類とはについては、項目ごとに説明します。
パルスオキシメータによる観察
動脈のヘモグロビンに結合した酸素が含まれている場合の量を、分光吸収特性の特徴を利用して、酸化と非酸化の特徴を導き出す事です。透過光の振幅比を検出する事で、酸素飽和度(オキシメータ)を求める事が可能です。
動脈血を通過したかの判断は、拍動(パルス)の有無によって測定しています。動脈血における酸素化の状態を調べるには、ヘモグロビン酸素解離曲線を理解する必要があります。
酸素分圧(PaO2)が高くなる事で、平坦を示すグラフ表示になりますが、PaO2が60mmHgから40mmHgまで低下する事で、酸素飽和度(SpO2)が急速に下がり、90%から70%にまで低下するのです。酸素飽和度を下げる状態で、術中の表示が90%以上でも原因と人工呼吸器のトラブルを追求すべきです。
カプノメータの使用について
二酸化炭素濃度を測定する機器です。赤外線の吸収量が変化する事で反応しています。モニターの縦軸が表すのは二酸化炭素濃度となり、横軸を表すのはカプノグラムの測定時間になります。呼気終末の二酸化炭素濃度は、数mmHg低く表示されています。
身体で産生された二酸化炭素が呼気中に出てきます。循環のモニターとして利用する為に、代謝と換気条件において必要な事はそれが一定である事です。以下2つの方法を使用します。
1.メインストリーム方式
測定部分をダイレクトに気道につなぐ場合、リアルタイムで測定が可能です。死腔(しくう)とは、気道のうち血液とガス交換を行わない部分で、気管チューブが損傷しないようにする対策で増加を防ぎます。
2.サイドストリーム方式
麻酔器の回路から吸引するので軽くて使い易いですが、低流量麻酔の状況で値が微妙にずれていく事や折れ曲がる可能性がチューブにあり、測定出来なくなる事もあります。
4つの相に対する分析
〇第Ⅰ相では、二酸化炭素がゼロより高い濃度で、再呼吸が起こるのが確認出来ます。呼吸回路の部分での漏れや麻酔回路の故障によるもので、吸収材による消耗が原因となっています。これによって変化が起こり、二酸化炭素の混入する事で再呼吸が起こるのです。
〇第Ⅱ相は、時間の延長がある場合に、呼気の排出がスムーズに出来ない場合です。気道狭窄や呼吸回路の閉塞と、サイドストリーム方式のサンプリングの流速が遅い場合に起こります。
〇第Ⅲ相は、気道が狭まくなる事で、二酸化炭素の排出が一定でなくなります。呼気終末の形は、二酸化炭素濃度が徐々に上昇を続けるようになります。慢性閉塞性気管支炎や喘息の発作などが考えられます。
〇第Ⅳ相は、吸気弁の故障やサンプルガスの吸引が遅いときや、吸気量より吸引量が多い状態に起こります。
血圧ガスの見かた
血中の酸素分圧(PaO2)や二酸化炭素分圧(PaCO2),酸塩基平衡の観察を測定します。その状態の意味を理解する事と基準値を知る必要があります。
呼気麻酔ガス・モニター
麻酔器を通して、セボフルランなどの揮発性吸入麻酔薬や笑気の濃度を吸気と呼気に分けて観察出来ます。吸気中の炭酸ガス分圧を同時に測定出来る機能が備わっています。麻酔薬は肺から血液中に吸収されて、脳で効果を表します。麻酔維持中は呼気中の麻酔ガス濃度を観察して、効き目や深さがわかります。
気道内圧モニターについて
人工呼吸器の動作状況の確認と人工呼吸器使用中の患者さんに対して、換気予備能力やウィニングの指標と呼吸器系の状態把握などに評価を行う為に重要です。
呼吸音の聴取や胸郭の動きと呼吸パターンの観察
呼吸音の聴取や胸郭の動きは換気の状態により、術前評価に対して起こりうる危機を予測する事で重要な部分です。呼吸音でわかる事は、換気の有無や気道分泌物や気管チューブの折れ曲がりによる閉塞が確認出来て、早期発見に役立ちます。また、胸郭の動きの左右差や奇異性呼吸や陥没呼吸などで、換気異常を出来る限り早く発見することが可能になります。
まとめ
呼吸モニタリングの目的は、異常を早期に発見する事により、応急処置をすみやかに出来る事にあります。モニター機器は精密な機器なので、ちょっとした事で異常を起こす要因となります。機器だけに捉われずに自分の経験値や五感を研ぎ澄ます事が、観察や安全性に効果を発揮するのです。