麻酔器の保守点検で安全な医療体制を
医療機器の管理点検は医療現場の事故を防ぐために必要不可欠で、日常的な点検で正確な検査が可能となります。麻酔器や人工呼吸器の導入により高度な医療サービスが提供できる様になりましたが、医療機器の安全性や信頼度の確かさがより厳格化されるようになり適切に医療機器を使用するためには保守・点検は欠かせません。今回は医療機器の保守・点検について紹介していきましょう。
医療機器の安全管理
医療事故防止には、医療機器知識の修得や組織による事故防止への取り組みを行うことが重要です。
医療機関は医療機器の安全管理体制の確保措置が義務づけられ、医療機器の操作方法や保守管理が不適切だと故障原因や患者の健康に重大な影響を与えることから、医療従事者は常に医療機器を安全かつ適正に使用することが求められています。
病院における医療機器の安全性や信頼には、医療機器管理台帳を作成して高度医療管理機器のデータを記入して保守・点検、修理点検、新たな追加購入機器を管理することが求められます。
麻酔が与える身体への影響
麻酔は身体に様々な影響を与えます。
〇呼吸への影響
麻酔薬によって肺胞気酸素分圧が低下して、肺胞換気量割合のバランスが崩れると、血液の肺静脈流入によって動脈血酸素飽和度が低下し、呼吸不全を起こす危険性があります。
〇尿量への影響
麻酔薬使用で全身の血液循環に変化が起こり、腎臓を流れる血液量が低下と、手術による侵襲的な処置による抗利尿ホルモンの分泌が促進されることで、尿量が減少するため長時間におよぶ麻酔使用は尿量確認をする必要があります。
〇血液循環への影響
麻酔薬の使用によって心臓の機能が抑制され末梢血管の拡張、迷走神経反射や体温低下などの血圧が低下することがあるため、必要に応じて昇圧剤を使用して麻酔を維持することもあります。手術後は脳血管疾患の危険性が高く、高血圧の方は注意が必要です。
安全性への取組み
麻酔器の点検は長期間使用していない機器内部品の劣化等を考え、点検だけでなく定期点検を実施することになっていることから、長期間使用していない麻酔器は十分な保守点検をおこなわなければならないため機器性能を適正に維持し、安全を優先に取り組まなければいけません。
麻酔器の保守点検項目
麻酔器は安全性向上のため、積極的に以下の項目の点検をおこないます。
〇補助ボンベ内容量および流量計の点検
〇補助ボンベ酸素供給圧低下時の亜酸化窒素遮断機構およびアラームの点検
〇医療ガス配管設備(中央配管)によるガス供給のチェック
〇気化器の点検
〇酸素濃度計の点検
〇二酸化炭素吸収装置の点検
〇患者呼吸回路の組み立て
〇患者呼吸回路や麻酔器内配管の真空装置の漏れの確認及び酸素一時的な光線提供機能の点検
〇患者呼吸回路の用手換気時動作確認
〇人工呼吸器とアラームの点検
〇各項目の点検完了チェック
具体的な保守点検
具体的な点検は下記の通りです。
〇日常点検
外観や機能点検の実施、始業前点検、終業前点検、使用中の安全装置や警報装置、電源系統確認などの検点検を行います。なお、使用前・使用後の消毒や清拭、消耗品の補充や交換なども含まれます。
〇定期点検
定期点検は機器内部の部品交換など機器性能確認、専門的技術や知識、検査工具機器が必要となるため、外部業者に委託する頻度明記と点検計画書を作成して視覚的な点検時期の把握や点検見落としを防止します。
主な定期点検の項目
〇外観点検
ケーブルの接続状態や傷、汚れなどの点検を行います。
〇機能、性能点検
各機能の正常点検や消耗品などの部品交換を行います。
〇電気的安全性点検
機器・装置等内部電気回路の電流漏れ点検をします。
〇定期点検済証の貼付
次回の定期点検済証を機器に貼付します。
まとめ
医療機器の保守点検や管理で麻酔器の点検は手術を行う為に欠かせません。麻酔を使用することで患者は筋肉弛緩や意識をなくすなど命にも関わることになるため、始業点検は徹底しておこなう必要があり、万が一の故障に備え医療機器の保守点検は重要です。