麻酔器の安全機構のポイント
麻酔器は日本のみならず世界中の医療機関で毎日のように使用されています。
麻酔器があることにより適切に手術や処置を行うことができ、現在の医療では欠かすことのできない医療機器となっています。
○麻酔器の安全機構
医療機器はさまざまな技術を施してできる限り安全性能を高めていますが、異常の発生を100%抑えることは不可能であり、人間が機器を扱う以上はヒューマンエラーの可能性もゼロではありません。
そのため、できる限り機器の異常やヒューマンエラーをゼロに近づけるために麻酔器には様々な安全機構が組み込まれています。
したがって、安全機構には大きく分けて、「異常を起こさないための機器構造」と「ヒューマンエラーを起こさないための人間工学に基づいた構造」があります。
○麻酔器の安全機構に関するダイアグラム
「麻酔器のJIS. Clinical Engineering 2(5): 293~299, 1991).【佐藤 暢】」では機器の人間工学的安全対策についてのダイアグラムを発表しています。
麻酔器を導入する際や現在使用している麻酔器の安全管理を行う際にはこのダイアグラムを満たしているのかということを参考にしてみましょう。
●機器の人間工学的安全対策
A.異常を引き起こさない構造・構成
①本質的に異常を生じない構造・構成
②異常状態又はその兆候の検知・検出
③異常状態を悪化させる条件の除去
④異常状態の結果生ずる危険の最小化
⑤異常状態の拡大防止
⑥正常状態に戻す機能
⑦代替機能
⑧異常状態の表示
⑨異常状態の防止
B.人間工学的な配慮・設計
①人間の特性に合ったインターフェース
②配置、位置の標準化(ツマミ・コネクタ)
③操作手順の適正化と標準化
④コーディングの採用(形・色等の統一)
⑤操作方法と機能変化方向の一致
⑥変化速度の適正化
⑦情報を整理して表示
○JIS規格・ISO規格を取得しているかをチェック
国内のメーカーで製造されている麻酔器については日本工業規格(JIS=Japanese Industrial Standards)によって規格が定められています。
麻酔器には「JIS T 7201-2-1:1999」という規格があり、この規格に準拠しているか機器であるかどうかという点も安全機構をチェックするポイントといえます。
海外製品においては国際標準化機構(ISO=International Organization for Standardization)と対比させる必要があります。
麻酔器の安全機構や規格に準拠しているかチェックすることは大切ですが、それに加えて麻酔器の点検や、安全管理マニュアルを作成しておくことも麻酔器を安全に使用する上で重要となってきます。