麻酔器運用上の注意点

治療用機器

麻酔管理の安全性向上においては、種々の機器と人との相互関係を知ることが重要です。特に麻酔器は、事故防止に重要なポジションを占めると考えられます。そこで、麻酔器に関するインシデントを通しながら、麻酔器の注意点について見ていきたいと思います。

麻酔器のパーツ別インシデント発生状況

麻酔器は様々なパーツから成り立っていますが、どういったところに危険性があるのでしょうか。パーツごとに、注意点をまとめてみました。見てみましょう。

メインスイッチ

メインスイッチで注意すべきことは、スイッチの入れ忘れです。酸素フラッシュやリークテストは出来ても、麻酔を始めようとしたら酸素がでなかったことで気付くというケースもあるようです。

流量計

亜酸化窒素のつもりで空気を、空気のつもりで亜酸化窒素を投与する誤りにも注意が必要です。これらは、麻酔器によって流量計が、空気、亜酸化窒素、酸素と並んでいるのものと、亜酸化窒素、空気、酸素と並んでいるものがあることから起こり得ます。また酸素流量計は、亜酸化窒素、空気の流量計と違う形状のものと、同一のものがあるので注意が必要です。

気化器

気化器の破損にも注意が必要です。気化器の破損により、設定した濃度の吸入麻酔薬が投与されないといったトラブルを招くことがあります。また、気化器に麻酔薬が入っていないことも起こりうることです。

例としては、脊髄くも膜下麻酔時、最初から気化器のダイヤルが開かれており、酸素投与のつもりが全身麻酔となってしまったケースがあるようです。

バッグ

ポップオフバルブを解放にせず自発呼吸で管理することで、バッグが大きく膨らんで、回路内圧が著しく上昇してしまうということが起こり得ます。

人工呼吸器

回路切り替えのスイッチがある麻酔器において、一方のスイッチのみしか操作せず、人工呼吸をし忘れるということにも注意が必要です。

この場合、無呼吸となるため無呼吸警報が鳴りますが、麻酔科医が「術者」になっているときには、警報音に気づかないというケースも見られます。

また、回路切り替えのスイッチが人工呼吸器側になっていたのに気づかず用手換気をしようとしたため、換気不能となってしまうということにも注意が必要です。

麻酔器の電源

麻酔器の電源の入れ忘れにも注意が必要です。患者に低酸素状態を引き起こす危険性があるため、必ず確認をしましょう。

まとめ

麻酔器のパーツごとの注意点を見てきました。麻酔器は、様々な潜在的危険性を持っています。その危険性がどこに潜んでいるのか知ることは、インシデント回避に有用です。ありうるべき危険性とまっすぐ向き合わなくては、インシデントや事故は繰り返されてしまいます。正しく運用したいものです。

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