麻酔器を構成する気化器の構造と重要性

治療用機器

全身麻酔は安全に手術を行う上で必須の医療機器です。患者に麻酔ガスを吸入させるタイプの麻酔では、それを構成する部品の1つに気化器が用いられています。それはどういった役割を持つ装置なのでしょうか。麻酔器についての概要とあわせて見ていきたいと思います。

おおまかな麻酔器の分類

全身麻酔には、大きく「吸入麻酔法」と「静脈麻酔法」の2つの区分があります。
「静脈麻酔法」とは、麻酔薬を静脈に注入する方法で、即座に効果を得ることができますが、麻酔薬の調整がシビアで血圧やSpO2(動脈血酸素飽和度)でモニタリングしながら行います。
「吸入麻酔法」は麻酔ガスを肺から取り込ませ、全身に行き渡せることで筋弛緩・無痛・健忘・有害反射の予防といった効果により苦痛から患者を守ります。
「麻酔器」の構成に必須な機構で気化器があり、安全に吸入麻酔薬を患者に送り込む役割を担っています。

麻酔器の歴史

麻酔器の歴史は古く1846年にエーテルをガラス球で気化し吸入させたことから始まり、クロロホルム・キセノン・亜酸化窒素といった薬品の使用や酸素を混ぜる方法も確立しました。国内でも1950年に閉鎖循環式麻酔器が開発され、1975年に人工呼吸器を組み合わせた麻酔器も誕生し、業界標準のタイプとして医療現場に広く普及しました。
麻酔のメカニズムはいまだ解明されておらず、大量の臨床実験データと経験によって今日の医療技術に取り入れられています。

麻酔器の仕組み

呼吸麻酔器は「ガス供給部」と「呼吸回路部」から構成されており、気化器はガス供給部のパーツになります。
麻酔器に送り込まれた酸素・亜酸化窒素・空気が流量計により調整され、気化器に送られます。気化器により完成した麻酔ガスは、吸気弁を通り人体に運ばれます。呼吸により吐き出されたガスは呼吸を管理する呼吸バッグとAPLバルブを通り、再利用のためキャニスタ(二酸化炭素吸収装置)に入った後、呼吸回路を循環します。

気化器の構造とメンテナンス

気化器によって、ガス供給部に取り込まれた酸素・空気・亜酸化窒素に、温度による飽和蒸気圧にあわせてダイヤルで濃度調整した揮発性麻酔薬が混合されます。麻酔ガスは通常は瓶で保管されていますが、室温で気化するため電気供給が必須ではありません。ただし、日本国内で承認されている「デスフルラン」のような麻酔薬は、温度と圧力制御が必要でデスフルラン用気化器にはセンサーやヒーターといった電子部品が備え付けられています。
気化器は単体医療機器として承認されているので、気化器のみの取り換えが可能ですが、麻酔器との互換性は事前に確認しておきましょう。

まとめ

麻酔器の構造と気化器の役割を解説しました。気化器はゴミや摩耗に弱い非常にデリケートな機器であり、正確なことが要求されます。日々のチェックやメンテナンスを怠ると、取り返しのつかない事故に発展する可能性もあります。安全な麻酔を行うためにも取扱説明書を熟読し、正しく使用しましょう。

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