レーザーメスの原理と使う事のメリット
医療用レーザーメスは様々な形で利用されています。電気メスに比べて出血が少ない、精密な切開ができるなど数多くのメリットがあり、医療用でかなり普及しています。今回はレーザーメスの仕組みやレーザーの原理など解説していきます。
レーザー光を作る原理
通常、原子や分子は運動しています。エネルギーを外からもらうと高いエネルギーを持った状態になり、しばらくすると高いエネルギー状態から元に戻ろうとして余分なエネルギーを光として外に吐き出します。
この吐き出された光が他の原子や分子にぶつかると、その原子や分子も高いエネルギーになって同じように連鎖していきます。これを誘導放出と呼びます。通常、高いエネルギーを持つ原子や分子は数が少ないので小さいエネルギーなのですが、なんらかの方法で高いエネルギーを持った原子や分子を一度に数多く作ると、なだれ式に誘導放出が起こり、非常に高いエネルギーを取り出す事ができます。
この時、向かい合わせた鏡を使い(共振器と言います)その光を繰り返し反射させると同じ方向にどんどん増幅され、一つの束になり、さらに強力なエネルギーとなります。これを取り出したのがレーザーです。
レーザーの特徴
自然の光は様々な方向にバラバラに進んでおり、なおかつ波長も様々です。レーザーはそれを一つの波長だけ取り出して同じ方向に集めたもので、「単一の波長」「方向が同じ」「位相(波の幅)が同じ」という特徴があります。同じ波を重ねて同じ方向に出す事で高いエネルギーを取り出す事ができるわけです。
レーザーの利用
体組織に高出力のレーザー光を当てると、凝固から始まり、炭化、気化、蒸散と最終的には蒸発してなくなります。原子や分子にはそれぞれ吸収されやすい色(光の波長)があり、吸収される色の性質とエネルギー量を変える事で様々な医療に利用されています。
レーザー医療機器の種類
医療用レーザーは用途によっていくつかの種類に分けられます。この時、用途に合った特定の波長だけを取り出すために使用される媒質が違います。
炭酸ガスレーザー
水に反応性が高いレーザーで、生体組織に吸収されやすく、出血も抑えられるため周辺へのダメージも少ない事が特徴です。歯科などでよく使われます。
Nd:YAGレーザー
タンパク質、ヘモグロビンやメラニンを比較的よく吸収し、水にはあまり吸収されないのが特徴。そのため、湿っている領域では少量のエネルギーで効果が期待できます。内部吸収性が高く、エネルギーが組織深部まで到達するため、組織深部の治療に用いられています。
半導体レーザー
LD(レーザーダイオード)とも呼ばれ、共振器部分を除けば構造がほとんどLEDと同じです。極論を言えばLEDから光を増幅して取り出しているのが半導体レーザーだとも言えます。出力に合わせて小型化しやすく取り回しもしやすいため、医療用に幅広く採用されています。
「切開、凝固」作用の高い高出力のハードレーザー、低出力で「鎮痛」効果に優れたソフトレーザーの2種に分類されます。ハードレーザーはレーザーメスや歯科や眼科のインプラント(金属に反応しないため)などに、ソフトレーザーは、傷口の治療促進、痛みの緩和、ソバカスや染みの治療などに使われています。
まとめ
レーザーメスは、ピンポイントでの精密切開や高速による切開、広範囲な止血や蒸散が可能で、術中の出血も少なく、術後の腫れ、痛みも少ないなど多くのメリットを持っています。そういった点を活かし、様々な医療分野で利用されているわけです。
今後も研究開発がどんどん進み医療用レーザーメスもさらに使いやすく体にやさしいものへと進化していくでしょう。