麻酔器の酸素濃度 ~PONVや注意点について~
手術中や術後に酸素器を使い酸素を投与する事があります。またそれ以外にも、入院時に酸素投与される事もあります。酸素投与は常時使用する場合もあり、その頻度は思っているよりも多いのが現状です。しかし、その場合の投与される酸素の濃度はまちまちです。今回はこの酸素投与の際の酸素濃度について見てまいりましょう。
麻酔器と酸素
全身麻酔の手術などでは、その術中や術後に麻酔器で酸素を投与する事があります。術後の悪心や嘔吐・低酸素血症を起こさないようにという事から実施されています。このような嘔吐などの症状をPONV(postoperative nausea and vomiting)といいます。
このPONVの発生率は2%~40%で起こると言われており、それほど低い確率ではなく、割と高い頻度で起こっているといえます。これが発生する因子は様々で、男女の違いや喫煙の習慣の有無、麻酔時間の長さなどが考えられています。
予防策として手術を受ける患者すべてに講じるのではなく、発生する因子などから、その危険性がある患者には予防策を講じる事が、その発生を減らすものに繋がる観点から実施されることが推奨されています。
またその際、手術内容にもよりますが、術中に投与される酸素の濃度や体温などからSSI(手術部位感染)の発生率なども変わってくると言われています。この手術部位感染は患者の生死にも関わってくるものであり、これを予防する事は重要です。
こういったことで、患者に麻酔器で投与する酸素濃度は手術中や術後の患者の容態に深くかかわってきます。一般的に術中の酸素投与濃度は30%の酸素を送気していますが、この濃度を高める事でSSIの発生は低くなると言われていました。
現在ではこの報告はあまり関係がないという報告もなされています。現在では、このSSIの発生に関する決定的なエビデンスはないというのが現状のようです。
術後の酸素投与
術後の酸素投与はその手術内容にもよりますが、部分麻酔などの手術後などにはあまり実施されることは少ないようです。まず基本的には自然呼吸下において、SpO2(動脈血酸素飽和度)が手術前の値に戻れば酸素の投与はする必要がないとされています。
しかし、呼吸抑制や上気道閉塞といった重篤な術後早期低酸素血症の危険性が高い時間帯においては、酸素投与が必要であるという事です。酸素療法を実施するにあたっては酸素中毒の危険性を回避するため、その酸素濃度は60%以下が望ましいとされています。
また酸素投与するにあたっては、その患者の年齢なども考慮し、特に未熟児などに酸素投与する際には未熟児網膜症予防の注意が必要とされています。
現代の麻酔器は各種機能を装備した安全なものに進化しておりますが、やはりその取り扱いには注意が必要であることは言うに及びません。
まとめ
このように麻酔器での酸素投与に関しては、その濃度や時間などが患者ごとや病状などが深く関わり、注意が必要な医療行為である事には間違いがありません。酸素も使い方を間違えてしまいますと危険が伴うものであるとの認識が必要です。