血管内治療ステントグラフト内挿術とは?有力な手術治療法とされる理由
高齢化が進む日本では、医療分野においても体に負担の少ない治療が求められているといえますが、大動脈瘤に対する手術治療でも新たな治療方法としてステントグラフト内挿術が広まっています。
体力が低下した高齢者や、心臓や呼吸器などの疾患により開胸や開腹する外科手術は難しいという方にも有益な治療法といえ、出血量や合併症なども開胸手術より格段に抑えることができます。
入院する期間や社会復帰するまでの時間を短期化できるなど、様々な負担を軽減できる治療法といえますが、血管内治療ステントグラフト内挿術とはどのような治療法なのか説明します。
大動脈瘤とは
大動脈瘤とは、大動脈径が正常径の50%を超えて拡張した状態です。
日本は高齢化が進んでおり、食生活も欧米化しているため、動脈硬化に起因する疾患が増えています。
その中でも大動脈瘤は、大動脈の一部が瘤‘(こぶ)状に膨らんだ状態であり、症状なく進行するため突然破裂し出血死してしまうリスクを抱えます。
破裂しなければ無症状ではあるものの、だんだんと大きくなれば咳・血痰・胸痛・腹痛・腰痛・背中の痛みなどが見られるようになります。
痛みを感じた段階ではすでに破裂リスクが高い状態であるため、早急に医療機関を受診することが必要です。
万一破裂すれば死亡率は80~-90%であり救命は難しくなるため、事前の予防が重要といえます。
大動脈ステントグラフト内挿術の目的
大動脈ステントグラフト内挿術とは、ステント(形状記憶合金の網状の筒)とグラフト(人工血管素材)を組み合わせたものを棒状にし、鉛筆ほどの太さのシースという管に収め動脈に挿入し、大動脈瘤が破裂することを防ぐ方法です。
大動脈瘤の位置までシースを押し進め、ステントグラフトをシースから押し出すことで、押し出されたステントグラフトが形状記憶の作用と血圧で血管の内壁に押し当てられて血管内部から患部を補強します。
大動脈瘤の新たな治療として注目されていますが、動脈瘤の形状や位置で、手術が可能か適応の制限などが厳しく、手術の実績もまだ10年程度であるため耐久性や治療効果などでの問題はあります。
そのため大動脈ステントグラフト内挿術を行った際には、定期的な検査や確認が重要になるといえるでしょう。
今後はステントグラフトの品質が改良されることで、対応可能となるケースが増えることが見通されています。