呼吸器の検査にも使われるファイバースコープ
はじめに
ファイバースコープを使った内視鏡検査といえば、胃カメラを想像される方が多いと思います。
実際に、現在医療現場で使われている内視鏡の前身は胃カメラであるといえますし、最も多く行われている内視鏡検査も胃や食道、十二指腸といった上部消化管を対象にしたものです。
しかし、技術の発展によって内視鏡検査の対象となる身体の範囲は広がりを見せ、現在ではさまざまな身体部位の検査や治療にファイバースコープが使用されるようになっています。
今回は、そのようなファイバースコープの中でも、呼吸器の検査や治療に使われているものについて説明します。
気管支ファイバースコープについて
呼吸器に使われているファイバースコープ(気管支ファイバースコープ)は、「気管支鏡」または「肺カメラ」といわれることもあります。
一般的な口から挿入するタイプの消化器用の内視鏡(上部消化管用スコープ)が直径7ミリから10ミリ前後であるのに対して、呼吸器の検査に使われるものは、直径3ミリから6ミリ前後と細くできています。
このファイバースコープを使えば、直接的に呼吸器の中を見るだけでなく、組織や細胞などを採取して病理的な検査へとつなげることも可能になります。
ファイバースコープを用いた検査法
直接的な観察以外の、主な検査法には以下のようなものがあります。
経気管支肺生検
呼吸器の奥まった、ファイバースコープを使っても見ることができない部分を調べるための検査方法です。
この検査では、呼吸器の中に入れたファイバースコープの先端から、生検用の器具(ブラシや鉗子)を呼吸器の奥のほうへと伸ばして組織を取るのですが、その作業はレントゲンによって呼吸器の内部を透視しながら行われます。
擦過細胞診
擦過細胞診は、ファイバースコープの先端に取り付けたキュレットと呼ばれる機器やブラシを使って病変部をこすり、組織を取る検査法です。
気管支肺胞洗浄
呼吸器の末梢(肺胞)部分を調べるための検査方法です。
この検査では、ファイバースコープの先端から150cc程度の生理食塩水を注入して洗浄し、その洗浄液を回収して病理診断を行います。
最後に
病変のサイズや部位によっては、ファイバースコープによる検査ができないこともあります。
そのような場合には、CTで見ながら、皮膚の上から針を呼吸器に刺して組織を取るCTガイド下肺生検と呼ばれる方法が使われることがあります。
また、場合によっては、開胸手術によって組織を直接取る方法や、皮膚を切って胸腔鏡や縦隔鏡を入れて組織を取る方法などを使って検査を行うこともあります。
これらのケースでは、全身麻酔が必要になります。
なお、ファイバースコープは、検査だけでなく、気管支が狭くなってしまう病気の治療にも用いられています。