人工呼吸器用語の「プラトー圧」について
はじめに
「吸引圧」、「気道内圧」、「PEEP」など、人工呼吸器に関連する専門用語にはさまざまなものがあります。
このような専門用語は、お医者さんや看護師さんといった医療従事者であれば、知らない人のほうが少ないかもしれませんが、一般の人にとっては耳慣れないものばかりかもしれませんね。
今回は、そのような人工呼吸器に関連した専門用語のひとつである「プラトー圧」について見ていくことにしましょう。
そもそも「プラトー」とは?
「プラトー圧」の「プラトー」とは何を表す言葉なのでしょうか?
そのあたりから見ていきましょう。
英語のプラトー(plateau)には、もともと「高原」という意味があります。
ところで、何かを学習しているときの進捗状況を曲線で表してみると、最初のうちは右肩上がりのカーブを描き、順調な学習の様子が見てとれますが、しばらくすると疲労などの要因によって進捗状況が停滞し、その曲線が平坦、すなわち「高原」のような状態になることがあります。
心理学などでは、この状態を文字通りに「高原状態」(プラトー)と呼びます。
このことから「プラトー」という言葉には「景気や学習、技術の習得など何らかの進行が一時的に停滞する状態」という意味もあるわけです。
人工呼吸器の「プラトー圧」とは?
では、人工呼吸器の「プラトー」とはどのような状態を指すのでしょうか?
人工呼吸器には吸気弁と呼気弁が取り付けられており、患者さんが息を吸う(吸気)ときには吸気弁が開いて呼気弁が閉じている状態になります。
そして、逆に患者さんが息を吐く(呼気)ときには吸気弁が閉じて呼気弁が開くわけです。
人工呼吸器の「プラトー」とは、この吸気と呼気の間に、あらかじめ設定した時間だけ吸気弁、呼気弁の双方をともに閉じたままとし、気道内圧を一定の高さに保ったままの状態にしておくことをいいます。
「プラトー」は、別名「休止時間」、「ポーズ」、「EIP(End Inspiratory Plateau)」などとも呼ばれますが、すべて同じ意味です。
そして、「プラトー圧」とは、このときに肺胞にかかる圧(つまり息を吸い終わり、ガスの流れがない状態の圧)のことをいうのです。
最後に
最後に、なぜプラトーを設定するのかについても見ておきましょう。
先ほど名前が出てきた「肺胞」は、肺の末端にあたる組織で、肺の中にはおよそ3億個から6億個の「肺胞」があるとされています。
吸気によって「肺胞」に届けられたガスに含まれている酸素は、ここから血液に取り込まれて全身の組織へと運ばれ、また全身から肺にまわってきた血液は「肺胞」に二酸化炭素を受け渡し、そして呼気によって排出されます。
ただし、この「肺胞」の膨らみやすさには、個々の「肺胞」によって違いがあります。
そこで、膨らみにくい「肺胞」にもガスが入りやすいように酸素と二酸化炭素の交換効率を向上させる目的でプラトーを設けるというわけです。