人工呼吸器の使用における正常値維持
人工呼吸器を使用で得られる効果としては酸素化の改善、適切な換気量の維持、呼吸仕事量の軽減の3つに分けられます。酸素化とは酸素が血液に取り込まれることで、改善には動脈血酸素分圧(PaO2)を若年健康者なら100mmHg・老年健康者なら80mmHgに保つことが求められます。換気量の改善にはCO2排泄と肺胞低換気(PaCO2)の正常化といった目的があり、35~45(mmHg)を正常値として維持する必要があります。
自発呼吸と強制換気
自発呼吸と強制換気の決定的な違いは、胸郭及び横隔膜運動の生じる方向性にあります。
自発呼吸は胸郭と横隔膜の運動させることにより2次的に気道と肺に気流を生じさせますが、強制換気は気道と肺に気流を送り込むことで2次的に胸郭と横隔膜を動かしています。
人工呼吸管理は可能な限り生理的な呼吸に近い換気を維持することが重要です。
PSV(Pressure Support ventilation)モード
必要な1回の換気量(6mL/kg)であり、患者の呼吸の状態を感知(トリガー)して気道内圧を上げる人工呼吸モードです。
PSVモードは患者の呼吸に合わせて吸気ガスを供給できるため自由に呼吸することができますが、逆に自発呼吸が弱すぎると感知できません。喀痰貯留や無気肺が起こると一回の換気量が減少するので、注意してモニタリングし喀痰吸引といった気道の障害物を取り除く対処を行いましょう。
SIMV(同期的間欠的強制換気)
同期的間欠的強制換気SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)とは、自発呼吸に同期させて、強制換気を間欠的に行う方法です。これにより送気のファイティングを防ぎます。SIMVは自発呼吸なしでも設定したタイミングで強制換気を行えるため、PSVを併せて自発呼吸をサポートすることが一般的です。
鎮静の評価スケール
人工呼吸管理中には患者の睡眠や維持が大変重要になり、不安や苦痛が改善されなければ不穏やせん妄を引き起こしています。気管挿管されている患者の、故意による気管チューブ抜管といった事故を未然に防ぐためには適切な鎮静深度を調整が必要不可欠であり、不穏鎮静のための基準となる鎮静・不穏の評価スケールが利用されます。
RASS
ICUにおける患者の鎮静の状態を評価する上で、非常に信頼性のあるツールです。意識が鮮明で穏やかな状態を基準値(0)とし、+に向かうに従い興奮状態、-に向かうに従い過度な鎮静状態と評価します。目視での確認と声掛け・反応がなければ肩を揺すったり、胸骨を圧迫しることで評価を行います。
興奮状態の評価にある場合は適切な量の鎮静剤を投与し、過度な鎮静の場合にはコミュニケーションなどにより目標の鎮静状態にまでコントロールします。
まとめ
適切な人工呼吸にはSIMVとPSVを利用し効率よくCO2排泄させることが重要です。人工呼吸器使用の目的を患者の容体に合わせて明確化し、鎮静状態を保ちながら正しく使用することが大切です。