人工呼吸器とは?延命に用いられる設定も
延命治療とは、人が治療を受けなければ生命活動を維持できない状態となった際に、病気自体の根治ではなく人工呼吸や輸血、輸液などによって延命することを目的とした処置のことです。(人工呼吸、人工栄養、人工透析が3大延命治療とも言われています。)
医療技術の進化により、意識がなく意志疎通ができない状態であっても生命活動を維持することが可能になりました。
しかし、この延命については本人のQOL(生活の質)やご家族の意向、尊厳死・安楽死といった倫理的な観点からもさまざま議論が続いているのが現状です。
○人工呼吸器による延命
自発的に呼吸ができなくなったときに、人工呼吸器を使用して心肺機能の維持を図ります。
まず、自発呼吸器による換気経路は主に以下の3種類があります。
●気管切開
長期間の人工呼吸管理が必要と判断された場合に用いられます。
ガス交換を行わない導管部分の領域(死腔)が少なく、また痰の吸気が容易であるため在宅管理にも向いています。
●気管挿管
確実に気道確保ができるため、緊急時や手術時によく用いられます。
挿管時の歯牙損傷や食道挿管などの事故、肺炎のリスクが高くなるなどの合併症があり長期間の人工呼吸管理が必要であれば気管切開へ移行します。
●マスク
非侵襲的陽圧換気(NIPPV)に対して用いられます。
着脱が容易で手術も必要ありません。
長期間の使用ではマスクの圧迫による皮膚障害のリスクがあります。
○人工呼吸器の動作モード
人工呼吸器の動作モードは以下の通りです。
●間欠的陽圧換気(IPPV)
患者の自発呼吸を感知せずに1回換気量、換気回数などすべてを設定して空気を送り込む動作モードです。
脳死状態や終末期で自発呼吸が全くない状態での延命処置、全身麻酔下において適用となります。
●同期的間欠的強制呼吸(SIMV)
患者の自発呼吸を検知すると補助換気を行い、自発呼吸がない状態では設定した呼吸回数によって最低強制換気回数が保証されます。
SIMVは呼吸不全の患者に対してよく適用される換気モードです。
●持続的気道陽圧法(CPAP)
気道内圧を常に大気圧よりも高く保ち、機械的な換気補助はなく自発呼吸にまかせて換気を行う換気モードです。
高濃度酸素でも動脈血酸素分圧が不安定な場合や人工呼吸器からの離脱過程、呼吸器不全の初期に適用となります。
そのため、延命による換気維持には適しません。
○自発呼吸の検知
どの換気モードでも患者の自発吸気を検知しながら空気を送気するため感度(トリガー感度)を設定します。
トリガーにはフロートリガーと圧トリガーの2種類があり、フロートリガーは回路内に空気流しておき、空気の送量と人工呼吸器に戻った空気量を比較して自発呼吸を検知します。
圧トリガーは患者の吸気で圧が下がった場合に自発呼吸を検知します。