麻酔器清掃における観点について
患者さんの意識および感覚を一時遮断することで、手術など身体切開を伴う医療行為を可能とする麻酔器。その衛生管理について、感染症の有無を問わず普段から清掃・消毒などの対策が欠かせません。麻酔器の清掃について、どのような体制で行われるべきか、見ていきたいと思います。
医療具の清掃・消毒について
機械装置および器具を問わず、あらゆる使用済み医療具は、その清掃および消毒を含む後処理について厳格に規定付けられています。麻酔器もその例外ではありません。病院規則あるいは医療具の仕様などによって定められた規定に基づき、適切な洗浄・減菌処理が行われるわけです。
1次処理と2次処理
使用後の医療具取り扱いに関しては、1次処理と2次処理の2通りに分類されます。
1次処理は、使用直後の処置を指します。健常者が触れても感染しないレベルまで汚染を除去する、もしくは、そのまま封入密閉し細菌などが外部に漏れないようにする、といった処置です。
汚染を除去する処置について、具体的には、使い捨てのもの以外はすべて汚染されたものとして扱い、病原体を不活性化させるべく消毒・洗浄を行うことを意味します。
2次処理は、使用後の器材について感染性を低下させた後、洗浄・消毒・減菌の工程を経て再び使用可能な状態にする処置を指します。その具体的作業は主に、病院内設備の1つである中央材料室にて行われます。
従来、器材使用直後の1次処理にて汚染を除去した後、中央材料室にて2次処理に当たる方式がこれまで一般的でした。しかしその方式は、医療現場で感染リスクを高めてしまう点が懸念されています。
よって現在、1次処理では汚染除去を行わず使用後直ちに封入密閉して中央材料室に搬入し、その後汚染除去を含む一切の処置を中央材料室にて一括して行う方式が普及しています。
医療具のリスク分類
医療具は、その種類によって患者さんとの接触度合が異なります。接触の度合が高いものほど感染リスクも高まり、より入念な1次処理・2次処理が必要となるわけです。そのリスクについて、高い順に以下の3つに分類されています。
◆クリティカル器材:皮膚や粘膜を貫通するなどして、体内に挿入される器材。
◆セミクリティカル器材:粘膜あるいは傷などがある身体部位に接触する器材。
◆ノンクリティカル器材:患者に接触しない、あるいは皮膚表面のみ接触する器材。
麻酔器の清掃・消毒
麻酔器は、前項のリスク分類に照らし合わせればセミクリティカル器材に相当します。実際の清掃作業については、医療機関各々の規定および機種ごとに定められた取り扱いにより異なってくることでしょう。
あらかじめ装置の仕様もしくはメーカーへの問い合わせに基づいて清掃手順を確立しておくことが重要です。ここでは、概ね共通する清掃内容について見ていきたいと思います。
麻酔器は、麻酔ガスを生成するガス供給部と、患者さんに麻酔ガスを吸入させる呼吸回路部で構成されています。とくに呼吸回路部は、患者さんの呼吸器官と接触し、加えて回路内を患者さんの呼気が循環する構造となっています。感染対策を取る上で注意を要する部分と言えるでしょう。
装置外装についての清掃は、中性洗剤あるいは消毒用アルコールを布類に含ませて拭き、その後薬液を拭き取り乾燥させる手順で行います。装置内部について、患者さんの呼気が流れ込まない箇所に関しては定期メンテナンスなどによって対応されるため、頻繁に清掃する必要はないでしょう。
患者さんとの接触度合が高い箇所に関しては、ディスポーザブルすなわち再使用不可の部品とそれ以外の部品に分け適切に処理することが求められます。ディスポーザブル以外の部品は、セミクリティカル器材としてそれに準じた1次処理・2次処理の工程を経ることとなるわけです。
まとめ
以上のように、麻酔器を含むあらゆる医療具の後処理すなわち清掃・消毒処置について、以下の通り確認いたしました。
◆使用直後に行い汚染除去を目的とする1次処理と、再使用可能な状態とする2次処理の2段階に分けて行われる。
◆医療具の感染リスク分類について、クリティカル器材・セミクリティカル器材・ノンクリティカル器材の3通りがあり、レベルにあわせた清掃・消毒が必要。
◆麻酔器はセミクリティカル器材に該当する。
参考となれば幸いです。