耐用年数 ~麻酔器版賞味期限~

生体現象測定記録・監視用機器

医療器具に限らず、すべての道具には耐用年数が存在しています。税制上の意味合いが強いですが、寿命としての耐久期間として記載を義務付けられてもいます。人の命を取り扱う現場ですので、常に新しい器具類を入れて安全な手術を行うのが病院の使命でもあるのです。今回は、麻酔器における耐用年数についてお話ししましょう。

手術などで活躍

麻酔器は手術では欠かせない存在ですね。麻酔器は、外部からの吸入を通じて麻酔薬を体内に投入することにより全身麻酔を施す医療機器です。手術における呼吸と麻酔、双方の管理を行う機能を有しています。

供給装置や呼吸回路、ベンチレーター、蒸気供給装置、ガス排除装置、そして操作部をつかさどるモニタリング機器にアラームシステム、緊急時の備えとしての保護装置で構成されています。

手術をするとき、患者さんが感じるであろう「痛み」を和らげ、術中にはそれを一切感じさせないようにするのが麻酔そのものの役割と言えるでしょう。

しかし、食品に賞味期限があるように麻酔器をはじめ医療機器にも耐用年数が存在しており、税と薬事、二つの「法律」によってそれぞれ規定されています。

税法上

医療機関のある所在地直轄の税務署により定められており、償却資産税の対象とされています。病院を運営するにあたり、診察などで必要不可欠なのが医療機器類であり、患者さんの命を助ける役割を果たしているわけです。当然ながら耐用年数も税務署によって定められており、病院の決算の際にはそれらに対する減価償却が経理として行われています。

この法律の上では、課税の観点から制定されている基準と言えるでしょう。税法上の耐用年数を過ぎたからと言って、直ちに使用不能となるわけではありません。

薬事法上

製造販売業者によって定められているのが、薬事法に基づく耐用期間です。長期使用を前提とした安全性を確保するためにとられた措置であり、政府(厚生労働省)の省令により添付文章などに記入するよう義務付けられています。

日常や保守の各種点検のほか、故障に対する予防保守の実施など、適切な維持管理がなされていることを前提に定められています。

寿命

機器の使用に大きく関連する寿命について紹介しましょう。

①麻酔ガス供給装置→長寿命の部品が多く、供給安定および保守性に比較的優れていると言えるでしょう。気化器など内部の部品は気密性が重視され、濃度調節部に関しては寸法変化(原因は摩耗など)やほこりなどの蓄積で劣化していく傾向があります。それらの対応を含めて、定期的に行うべきメンテナンスおよび点検が欠かせません。

②麻酔呼吸回路→二酸化炭素吸収装置やキャニスターを装備している機種が多いため、基本的には機械部品の塊と言ってもよいでしょう。気密性が要となるため、ゴムパッキンやOリング、その他のプラスチック製部品について定期的に交換する必要があります。

③モニタリング機器→センサーと分析、表示の各ソフトのほかディスプレイなどといった部品が主となります。麻酔ガスセンサーは、医療用専門の部品であり、高コストかつスペアが無く、長期的な備蓄ができません。また液晶ディスプレイは、高価かつモデルチェンジが積極的に行われる部品であるため、コスト面に配慮した計画的運用が必要と言えるでしょう。

まとめ

このように、麻酔器をはじめとした医療機器関係には耐用年数および耐久期間が適用されています。それが、外科関連において無くてはならない麻酔器についての安全性確保の1つとなり、患者さんが安心して手術を受けられる体制づくりに貢献しているわけです。

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