脳波計の耐用期間・耐用寿命・耐用年数それぞれの違いについて
医療機器の使用期間における目安として、耐用期間・耐用寿命・耐用年数の3つが挙げられます。脳波計においても例外ではありません。では、それら3つの時間的要素はそれぞれどのようなことを意味しているのでしょうか。相違点について見ていきたいと思います。
耐用期間
医薬品や医療機器の取り扱いについて、その品質・有効性・安全性などを確保するために薬機法という法律が定められています。2014年の法改正以前までは薬事法と呼ばれていたその法律によって、脳波計を含む全ての医療機器に設けられているのが耐用期間です。
耐用期間は、医療機器が本来の性能を維持し得ると見なされる年数を意味しています。つまり、その医療機器を安心して使える期間と言えるでしょう。
その期間は、医療機器の機種別ごとにそれを製造販売しているメーカーの判断によって決められています。そのため同じ脳波計であっても、機種によって耐用期間が異なることになります。
安心して使用できる期間を示すものとは言え、それは前提として、始業点検や定期点検が滞りなく行われ、使用時や保守ついて標準的に取り扱われているケースに限定されます。その条件を踏まえつつ、部品交換・修理・オーバーホールなどを行いながら運用できる期間というわけです。
使用回数が想定より極端に多い場合など、イレギュラーな使用および保守環境に置かれている場合、必ずしも該当するとは限りません。
耐用寿命
耐用期間を過ぎたとしても、その医療機器が直ちに使用できなくなるというわけではありません。性能に問題がなければ、使用を継続することができます。医療機器の購入後、耐用期間を超過し、不具合が発生し使用不可能に至るまでの期間が耐用寿命ということになります。
耐用期間を超えても使えるとは言え、そのような状態に至った医療機器はミスや事故などのリスクを負うことになります。そのため、耐用期間を超えた医療機器については、早めに更新することが重要と言えるでしょう。
耐用年数
耐用期間・耐用寿命は、上記で見てきたように実際の使用に関する時間的要素に該当します。他方、耐用年数とは、財務関連の時間的要素に当たります。
耐用年数とは、資産について減価償却を利用できる年数のことを意味します。減価償却によって、それを利用する数年間の課税額が適正化されることになります。
医療提供を事業とする病院にとって、医療機器は資産に当たるものです。資産の中には長期間にわたる使用に伴い劣化や性能低下が現れるものもあります。医療機器もその部類に含まれるでしょう。
そのような資産は減価償却の対象となります。減価償却とは、購入に要した支出を定められた年数すなわち耐用年数で分割し、年ごとの決算に計上することです。そうすることで支出が複数年に分散されます。
課税額は、収入から支出を差し引いて出される収益によって決定するものです。減価償却を用いて支出を分散することで、経営状態をより正確に反映した収益額が導き出され、課税額が適正となるわけです。
耐用年数は、その資産の種類によって異なります。医療機器についても同様です。国が定めた「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に、資産の特徴を当てはめることでその耐用年数が判別できます。それを元に、脳波計の耐用年数を調べてみましょう。
表中の「構造又は用途」の項目では「医療機器」に該当します。次なる項目の「細目」では、医療機器のカテゴリ内での分類がなされます。脳波計は、脳の働きに伴って生じる電気的反応を検出し、それによって脳の状態を知る医療機器です。その特徴を当てはめると、「レントゲンその他の電子装置を使用する機器」に相当するでしょう。
その中で、移動式・緊急医療用・自動血液分析器に該当する機器に属さないのが一般的な脳波計と考えられます。これら条件に照らし合わせていくと、標準的な脳波計の耐用年数は6年であることが導き出されます。
まとめ
以上のように、脳波計をはじめあらゆる医療機器には、使用に関しては耐用期間および耐用寿命、財務的観点からは耐用年数といった時間的要素が定められていることについて見てまいりました。これらの違いを踏まえつつ、医療現場および経理それぞれの業務分野に対応していくべきと言えるでしょう。