脳波計における接触インピーダンスと入力インピーダンス

生体現象測定記録・監視用機器

脳活動に伴って生じる電気的変化を電位差として検知し、それによって脳の状態を観測する脳波計。これを用いる際には、電極および装置入力側について、電気の「流れにくさ」即ちインピーダンスを適宜に定める必要があります。どういうことなのか、見ていきたいと思います。

脳波検査に関連するインピーダンス

脳波検査とは、脳細胞がもたらす電気的反応を電位差として測定し、時間経過に伴う電位差の変化を示した波形から脳の状態を判別する検査のことです。

被験者の頭部21箇所に電極を装着し、そこから検出される電位差を脳波計で解析することによって脳波が描き出されます。つまり、脳波検査では電位差即ち電圧という電気的要素が用いられるわけです。そのため、考慮に入れるべき点の1つとして、交流電気の流れにくさ即ちインピーダンスが関与してきます。

電流および電圧が常に一定の向きや大きさを持っている場合、即ち直流の場合では、電気の流れにくさは抵抗として表されます。電流=電圧/抵抗というオームの法則がそれを示しています。

しかし、脳に生ずる電気反応のように、電圧・電流の向きや大きさが時間につれて変化するような状態は直流ではなく交流に相当します。その際には、抵抗に代わってインピーダンスが適用されます。交流でもオームの法則が成り立つため、インピーダンスを交流における抵抗と見なしても差し支えないでしょう。

脳波検査に関わってくるインピーダンスとしては、人体と電極が接触することによって生じる接触インピーダンスと、脳波計自体に生じる入力インピーダンスの2つが挙げられます。

望ましいインピーダンスの状態

インピーダンスが脳波検査にどのように関係してくるのか見ていきたいと思います。あらゆる検査・測定において、検知する対象と判別に用いるデータとの誤差を極力小さく抑えることが重要です。

それは脳波検査においても例外ではありません。脳波検査では検出する対象が電位差であり、電極で検知される電位差と、脳波計に入力されデータとして扱われる電位差を同一の値に近づける必要があるわけです。

検査データとして扱われる電位差は、脳波計に入力される電位差に相当し、入力インピーダンスが関連します。しかし扱われるべき電位差は、電極部分の接触インピーダンスも加わることになるわけです。

関係性を解りやすく式化するため、ここからは、接触インピーダンスをZs、入力インピーダンスをZi、本来扱われるべき電位差をE、検査データとなる電位差をVとして考えます。

電極が受けて脳波計へと入る信号は同等となり、これをオームの法則に照らし合わせて表すと、
E/(Zi+Zs)=V/Zi
となります。これをEとVの関係式に直すと、
E=V×Zi/(Zi+Zs)
となります。

実際の電位差Eと入力データの電位差Vが同一となるのが理想ですが、そのためにはZi/(Zi+Zs)=1となる必要があります。Zs=0となれば良いのですが、インピーダンス自体を無とするのは物理的に不可能と言えるでしょう。

しかし、Ziを高い値とし、Zsを極力小さな値とすることで、EとVの値を近づけることができます。

これは、脳波検査において、入力インピーダンスは高く、接触インピーダンスは低く設定できれば、検査精度を向上できるということを示しているわけです。

インピーダンスの観点から検査精度を高めるための措置

入力インピーダンスは脳波計の性能に関する部分に相当します。高い値を設定できる機種ほどより精度の高い検査が実施できると言えるでしょう。

接触インピーダンスに関しては、検査前の電極装着部の処理によってその影響を低下させることが可能です。電極を付ける前に、アルコール綿などを利用して頭部の皮脂や角質を落とすことが重要となります。それによって、接触インピーダンスを30kΩ以下、可能であれば10kΩ以下に抑えることが、正確な検査を行う上で求められます。

まとめ

以上のように、脳波計においてインピーダンスは検査精度に影響するものであることを調べてまいりました。入力インピーダンスは高い状態に、接触インピーダンスは低い状態とすることが肝要です。

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