脳波計の弁別比について

生体現象測定記録・監視用機器

脳波計の性能表に必ず記載されている弁別比。「弁別比」(discrimination factor)とは、差動増幅器の同相入力電圧を抑制する能力を表した値で、同相入力と逆相入力それぞれの増幅度の比に相当します。これにより入力電圧に含まれる雑音を除去する能力が、数値化されるわけです。今回は脳波計と弁別比をテーマにお伝えします。

弁別比について

同相弁別比は、逆相信号の増幅度と同相信号の増幅度の比で求める事が出来ます。

計算式は、同相弁別比(CMRR)=差動利得÷同相利得です。実際には、その比率を常用対数(log)で表し、×20する事によってデシベル(単位:db)に換算した数値が扱われます。この値が高いほど高性能な差動振幅器であるという事が言えます。

差動増幅器のおかげで、現在はシールドルームの外でも脳波を正確に記録できます。

脳波計の差動増幅器の発展

脳波計は、1929年にハンス・ベルガーによって世界で初めて脳波が記録され、その歴史が始まりました。日本では1936年に東北大学工学部で試作された物が始まりと言われています。

1951年に日本医学会学術展示会において、インク記録式脳波装置の試作品が、東京大学技術研究所製の装置と同大学脳研製作の装置が発表されました。そして同じ年、東芝製6系統同時記録式脳波描記装置が試作され、東京都立松沢病院で使用されました。これが初の国産脳波計とされています。

その後、長い間脳波計は主として精神・神経科の分野で使用されており、脳波を計測する装置自体も大型で可搬性に乏しい物でした。

交通事故の増加等に伴う外科領域での脳波計の需要増大を受け、脳波計には可搬性が求められようになりました。差動増幅器の回路がトランジスタに置き換えられた事で、脳波計は飛躍的に小型軽量化が実現されました。重量は従来の真空管を使用した物に比べて3分の2以下となり、運搬は容易となりました。

ハム除去回路を搭載し、従来の真空管を使った脳波計から性能が大幅に向上した事で、ノイズに強くなった事からシールドルームの外での運用が可能となりました。

真空管使用の差動増幅器は、直結形増幅器でしたが、トランジスタ使用の差動増幅器からは変調形増幅器となりました。それによって動作がより安定し、取り扱いが容易になったわけです。

脳波計に使われる差動増幅器には、最初に真空管が使われ、次いでトランジスタ、IC(集積回路)、LSI(大規模集積)と技術革新と共に新たな装置が使われており、常に注の時代の最先端の技術が使われていると言っても過言ではありません。

脳波計の弁別比は、初期の頃に装置の規格として60db以上となるよう規定されています。つまり差動利得が同相利得の1000倍以上となるよう要求されているわけです。

現在では、一般的な性能の脳波計の弁別比は105db以上となっており、同相利得に対する差動利得の大きさで表すと約17万倍以上となります。現在の脳波計は、それだけ外部雑音の除去能力が向上してきたと言えるわけです。

まとめ

今回は脳波計の差動増幅器と弁別比をテーマにお伝えしました。普段医療の現場で活躍している脳波計について理解が少しでも高まれば幸いです。

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