脳波計による検査について
脳波検査では、脳の状態を計測し、それを基に診断や治療判断がなされます。その際に用いられる機器が脳波計です。それを使用する検査の目的および、脳波とは何であるのか、更にてんかんなどのケースを取りあげて、脳波検査についてまとめていきたいと思います。
脳波計による測定
脳は膨大な数の神経細胞により造られています。それら神経細胞は、細胞体・細胞質・軸索により構成されています。また、神経細胞は各自独立しており、細胞同士はシナプスという接点で神経伝達物質を受渡しすることで情報を伝達しています。
その際、神経の細胞が電気信号を発することによって神経伝達物質の分泌を制御します。この細胞が発する電気信号を活動電位と呼びます。
その電位差について時間経過に伴う変化をグラフ上に図示したものが脳波です。測定によって得られた脳波を判別し、そこから脳状態を把握する方法が脳波検査ということになります。
脳波を測定する場合、通常皿電極を頭皮に装着します。従って実際には、脳を構成する神経細胞のみならず、頭皮・頭蓋骨など脳以外の部分も含めて電位を計測することになります。
1つの電極の検出対象範囲には数百万個以上の神経細胞があり、その膨大な数の細胞が発する活動電位の総量を検知しています。装着する電極の数は、耳のアースを除いて19個あり、それぞれ配置箇所が定められています。
脳波の種類としては、デルタ波・シータ波・アルファ波・ベータ波・ガンマ波の5種が挙げられます。それぞれの脳波は、心理・生理状態を反映しており、リラックス状態やストレス状態などが判断できます。
検査の主旨
検査は、主に大脳の活動状態を体外から観測・記録する形式を取ります。脳の活動状態とは、知力とは関係なく、普通に生活を行う上での支障の有無など働き具合のことを指します。てんかんの評価、代謝性、睡眠障害、脳血管障害や腫瘍などについては必要な検査です。
検査法の手順としては、頭に電極を装着して、光刺激・深呼吸・開閉眼のときの脳波を記録します。記録が終われば、電極を外して検査終了です。
脳波検査の役割
てんかんにおける脳波検査は、診断および治療経過の確認といった2つの目的のために実施されます。
【1.診断のための検査】
もし何かの発症状が生じたとき、その状態がてんかんによる発作なのか、それとも別の病態に原因があるのか、それを判別するため脳波検査が必要です。
てんかん発作中の発作脳波からは重要な情報が得られますが、それが検査時に検出されることはまれです。しかしてんかんのないときの発作間欠時脳波から、個人特有のてんかん性所見を発見することができるため、診断に活かされます。
【2.治療経過を見るための検査】
〇治療初期段階
使用する薬剤投与が有効なのかそうでないのか、その判断材料とするために検査が行われます。発作を起こす頻度に変わりがないとき、反対に増えるような場合には、脳波検査を繰り返して薬の効果を確認します。
〇治療維持段階
抗てんかん薬の滴剤・適量が決定した後、その効果が見られる場合も周期的に脳波検査を実施します。通常発作が無くなってもてんかん性脳波異常が無くなるまでは、しばらく時間がかかります。そのため発作が抑えられていても、脳波検査が行われるわけです。
〇治療終了段階
発作が完全に抑制されていて、脳波の異常が見られず正常な状態が継続していれば、薬の減量・中止を判断します。数年の間発作がなく、てんかん性を示す脳波異常も見られないことが、薬の処方が中止される基準の1つとなりますが、絶対的とは言えません。服薬中止以後も1~2年に1回は検査を行うことが肝要です。
まとめ
脳波計で解析される脳波は脳の様々な状態を示すものであることや、てんかんなどの疾患について脳波検査が診断や治療経過判断などために必要であること、などについてご紹介しました。脳に関連する医療にとって脳波計は不可欠なものであると言えるでしょう。