心電図検査の所見に示される「反時計回り」とは

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心臓の状態を知るべく実施される心電図検査。その結果において、「反時計回り」という所見が出される場合もあります。これは、心臓がどのような状態に置かれていることを示すものなのでしょうか。心電図に関する初歩的な事柄から順を追いつつ確認していきたいと思います。

心電図検査の概要

心筋の緊張・弛緩に伴って収縮・拡張を周期的に繰り返し、それによって全身に血液を循環させるポンプのような役割を果たす臓器。それが心臓です。心筋の運動は心房部から心室部へと順序立てて行われ、それと連動して筋肉に生じる電気的反応も伝達していきます。

その電気的反応を検知し、心臓の動作や状態などを調べる検査が、心電図検査となります。

心電図とは、心臓に生じる電気的反応を電位差として検知し、縦方向を電位差・横方向を時間としてグラフ上に表すことにより電位差の変化を描画したものです。あらかじめ電気の流れる向きについても、+と-による2方向で定められ、電位差がグラフの基線より上であれば+向き、基線より下であれば-向きということになります。

こうした設定から、心電図によって心臓に生じる電気反応の向きと大きさの変化を記録することが可能となるわけです。

心電図波形

時間経過に伴う電位差の変化を記録していくと、心臓の収縮・拡張を示す心拍ごとに、連続した波形が周期的に現れる形で表されます。1つの心拍について、心臓のどの部分がどのように働いているのか、それら波形から判別することができます。

心拍を構成する波形の種類を発生順に挙げれば、次のようになります。
▼P波:心房の収縮・拡張を示す。
▼QRS波:心室部に電気が伝わる様子を示す。Q波・R波・S波の複合体。電位差の値が大きな尖った形で現れる。
▼T波:心室部の収縮の治まりを示す。
▼U波:心拍1回の反応が終了する際に現れる。

12誘導心電図

心電図波形の成分となる電位差は、被験者に取り付けられる電極から検知されます。電極の取り付け部分は、両手足首の4箇所と胸部中央から左腋下部にかけての6箇所です。そのうち右足首電極はアースとなりデータ検出には用いられません。その一方、両手首・左足首の3点からなる仮想3角形の中点が、不関電極という仮想電極として用いられます。

これら計10ポイントの電極箇所について、2ポイントずつ決まった組み合わせで区間を定め、+側と-側の2方向が設定されます。その区間を誘導と言い、各々の誘導で心電図波形が作図されていくことになります。一般的な心電図検査では12通りの誘導が用いられることから、12誘導心電図と呼ばれます。

12誘導は、手足の電極を用いる四肢誘導6通りと、胸部左側の電極を用いる胸部誘導6通りに大別されます。そのうち四肢誘導は、実物の電極2点を用いる双極誘導3通りと、実物の電極1点と不関電極からなる単極誘導3通りに区分されます。なお、胸部誘導はいずれも、実物の電極1点と不関電極の組み合わせとなっています。

検査で利用される12通りの誘導について、名称および電極の組み合わせは以下の通りとなります。

▼四肢誘導
 ◆双極誘導
  ▽第Ⅰ誘導:左手電極(+側)と右手電極(-側)
  ▽第Ⅱ誘導:左足電極(+側)と右手電極(-側)
  ▽第Ⅲ誘導:左足電極(+側)と左手電極(-側)
 ◆単極誘導
  ▽aVR誘導:右手電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽aVL誘導:左手電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽aVF誘導:左足電極(+側)と不関電極(-側)
▼胸部誘導
胸部中央から左腋下にかけて、所定の位置でV1~V6の電極が用いられます。
  ▽V1誘導:第4肋骨間胸骨右縁のV1電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽V2誘導:第4肋骨間胸骨左縁のV2電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽V3誘導:V2とV4の中点に当たるV3電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽V4誘導:第5肋間と左鎖骨中線の交点に位置するV4電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽V5誘導:V4と同高位の水平線と左前腋窩線の交点V5電極(+側)と不関電極(-側)
  ▽V6誘導:V4と同高位の水平線と左中腋窩線の交点V6電極(+側)と不関電極(-側)

心臓電気軸

誘導では直線すなわち1次元的な電位差の向きおよび大きさが表されます。12誘導をそれぞれの位置に配置して考えることにより、心臓の電気的流れが3次元的すなわち立体的に表されます。

立体的に捉えた心臓の電気的反応について、その向きと大きさを合成した場合、顕著な先鋭型として現れるQRS波の影響が強く現れます。QRS波が示すのは心室部に関する電気の伝播です。その向きは心臓を正面から2次元すなわち平面的に見た場合、おおむね右上側から左下側に向かうものとなります。

このようにして、心臓の電気反応全般における流れの向きが導き出され、これを心臓電気軸と言います。心電図の所見で示される時計回りおよび反時計回りは、この心臓電気軸の状態を意味するものです。

時計回りと反時計回り

心臓電気軸を下側から見たものと仮定し、これを基準に心臓の電気的反応を見た場合、軸を中心として電気の流れが回転している傾向が現れます。それを表しているのが、時計回りもしくは反時計回りという所見です。

時計回りでは、心臓が時計の針と同じ向きに回転する傾向を示します。主に心臓電気軸が標準より水平方向に傾いている際に見られ、肥満などにより心臓が横向きに押し上げられている状態を意味します。

逆に反時計回りは、心臓が時計の針と逆方向に回転する傾向にあることを指しています。心臓電気軸が正常より垂直方向に下がっている際に見られ、体型的に痩せ型あるいは胸部の厚みが薄い場合に現れます。

所見としては上記のような状態にあることのみを意味しているため、他に病患が見られない場合ではとくに問題ありません。

まとめ

以上のように、心電図の所見である反時計回りについて、心電図の基本から順に見てまいりました。それにより、反時計回りおよび時計回りは、標準と比較した際の心臓の位置を意味するものであることを確認いたしました。

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