目的に応じて使い分けられる、2種類の心電図
【はじめに】
心臓の電気的活動を波形で表し、それを読み取って心臓の動きを確認する、心電図検査。
検査を受ける際の負担が少ないため、学校や会社の健康診断でも広く用いられています。
また、心電図にもいくつかの種類があり、医療現場では目的に応じて使い分けがされています。
今回はその中から「12誘導心電図」と「モニター心電図」について、ご紹介します。
【12誘導心電図とモニター心電図】
1.12誘導心電図
健康診断や、心臓の検査などで用いられる心電図です。
体表面の2点間の電位差を記録し、波形で表します。
手足に電極をつける「四肢誘導」が6通り、胸部に電極をつける「胸部誘導」が6通りで、合計12通りの心臓の電気の流れを観察します。
検査の際には、心臓の電気を読み取りやすくするため「ゲル」や「ペースト」と呼ばれるクリームを患者の体に塗布します。
装着する電極は部位ごとに対応しており、大抵の場合線や電極に色がついています。その色をもとに、説明書の記載通りに患者の体に装着します。
電極を逆に装着してしまったり、装着する位置がずれてしまうと、波形が正しく表示されないので、注意が必要です。
心電図では、心臓の電気的活動をP波、QRS波、T波の3つで表します。波形を読みやすくするために、スケールという目盛りがついた道具が使われることもあります。
患者をベッドに寝かせ、安静状態で検査を行うため、長時間の心臓の電気的活動の計測には向きません。
2.心電図モニター
入院中の患者のベッドサイドや、ナースステーションに設置されていることが多い心電図です。
患者の胸部3カ所に電極を設置し、心臓の電気的活動を読み取ります。12誘導心電図と比べ装着する電極の数が少なく、患者が座っていても動いていても計測できるため、長時間の使用に向いています。そのため、入院中の患者に使用されることが多いです。
しかし、12誘導心電図と比較すると計測が簡易化されているので、心臓の動きを詳しく知るには12誘導心電図での検査も必要です。
現在は、心電図波形だけではなく、血圧や呼吸数、体温なども表示できるマルチモニターが広く使用されています。
患者が安静にしていなくてもリアルタイムで計測できるので、患者の体の異常を早めに見つけることが可能です。
また、設定すれば不整脈などの異常が起きたときなどにアラームで知らせる機能もついています。
【最後に】
最後に、12誘導心電図とモニター心電図の特徴をもう一度確認します。
12誘導心電図
・健康診断や心臓の検査などで用いられる
・四肢誘導6通り、胸部誘導6通りで、12通りの心臓の電気の流れを計測する
・患者を安静状態にして検査を行う必要がある
・短時間の使用に向いている
モニター心電図
・入院中の患者のベッドサイドに設置されることが多い
・12誘導心電図と比べて簡易な計測
・患者が安静状態でなくても計測が可能で、長時間の使用に向いている
このように、12誘導心電図にもモニター心電図にも、長所と短所があるので、医療現場では目的に応じて使い分けがされ、患者の体調管理に役立てられています。