心電図の波形から分かることが理解できていますか?
心臓を拍動させるため神経興奮の流れを「刺激伝導系」といいます。心電図はこの刺激伝導系を波形で表すことで異常を発見し、病気の診断に役立てる医療機器です。
○刺激伝導系とは
刺激伝導系のはじまりは右心房にある洞結節で一定時間ごとに発生します。この「一定時間」というのが心拍数の回数(早さ)やリズムに該当します。このリズムを洞調律(sinus rhythm)といいます。そして、この洞調律が不規則である状態を「不整脈」と呼ぶのです。
洞結節で発生した興奮刺激は心房を収縮させ、心房内の心筋を通って房室結節へと伝わり、ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維、そして心室を収縮させます。
心電図の波形をみることで、刺激伝導系のどの段階で異常が起こっているのかを推測することができます。
○心電図の波形を理解する
心電図の波形や感覚にはそれぞれ意味があります。
●P波
正常の心拍では一番初めに始まる刺激で、心電図では小さな波を示します。これは心房の興奮を意味します。
P波の前1/3は右心房の興奮刺激、波の中心1/3は右心房と左心房両方の興奮刺激、後1/3は左心房の興奮刺激です。どちらかの心房に異常があると波が歪(いびつ)な形になります。
●QRS
QRSはヒス束→左脚・右脚への伝導を示す波形で、心房から心室への興奮刺激を意味します。QRS波はP波に続いて現れ、P波よりも鋭く大きい波です。
最初に現れる下向きの波(陰性波)をQ波、上向きの波(陽性波)をR波、Q波を含めた2回目以降の陰性波がS波です。これらをまとめて「QRS」と呼びます。
●T波
T波はQRS波の後に続くゆるやかな波形で、心室の弛緩(再分極)を意味します。
●U波
T波の後に小さな波が出現する場合がありますが、これをU波と呼びます。プルキンエ線維の再分極と言われていますが、理由ははっきりしていません。モニター心電図でははっきりと表示されないことがほとんどです。
●PQ間隔
P波の始まりからQ波が始まるまでの時間で、心房の興奮の始まりから房室結節とヒス束を通って心室筋の興奮が始まるまでの時間を意味します。
●QT間隔
Q波の始まりからT波が終わるまでの時間で、心室興奮の始まりから興奮が醒めるまでの時間を意味します。
●RR間隔
R波の頂点と次のR波の頂点までの長さです。RR間隔がわかれば心拍数を計算することができます。
●ST
QRSの終わりからT波が始まるまでをSTと呼びます。正常では水平(基線と一致)ですが、右に下がっていれば心筋の虚血,心室肥大を疑います。逆に上がっていれば急性心筋梗塞や急性心膜炎が考えられます。