CT装置の原理について

診断用機器

はじめに

CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置は、アメリカの物理学者アラン・コーマックが1963年と1964年に公表した理論をもとに、イギリスの電子技術者ゴッドフリー・ハウンズフィールドによって1970年代に開発されました。
コーマックとハウンズフィールドは、この功績により1979年のノーベル生理学賞・医学賞を受賞しています。
今回は、このCT装置の原理について見ていきたいと思います。

まずX線とレントゲン撮影についての理解から

CT装置ではレントゲン撮影と同じくX線が使用されており、CT装置の原理を理解するためには、まずX線によるレントゲン撮影の原理について知るのが近道です。

X線は1895年にドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲンによって発見された放射線の一種であり、「レントゲン撮影」という言葉はこの発見者であるレントゲンの名前に由来しています。
ちなみに、レントゲンもこの功績によって1901年に第一回目のノーベル物理学賞を受賞しました。

このX線は、波長が短く高いエネルギーを持つ電磁波(光)です。
ただ、光といっても人間が見ることのできる波長の範囲(可視光線)からは外れるため、人間の目で見ることはできません。

ところで、人間の身体組織(その他のあらゆる物質も同じですが)はもとをたどっていけば原子から構成されており、原子と原子の間にはわずかな隙間が存在しています。
X線は、波長が短いのでこの隙間を通り抜けることができる、言い換えれば、身体組織を透過することができるのです。
ただ、その程度は組織の密度や平均的な原子番号によって違ってくるため、部位によってX線の透過量は異なります。
したがって、X線に感度を持つフィルムに身体組織を透過させたX線をあてれば、体内の画像を得ることができるようになります。
これがレントゲン撮影の原理です。

ではCT撮影はレントゲン撮影とどう違うのか?

CT装置のガントリー(寝台の部分が入っていく大きな輪の部分)には、X線を照射するX線管が取り付けられていて、撮影のときにはこれが回転して360度にわたりX線を照射します。

CT撮影がレントゲン撮影と違うのは、この後です。
CTでは、透過したX線をフィルムにあてるのではなく、ガントリーのX線管に正対する位置に取り付けられた検出器でその透過率を読み取ります。

そして、その透過率をコンピュータで計算処理することによって、あらゆる角度から見た断層画像を作成するわけです。

最後に

CT装置を使った撮影の原理は以上のようなことになります。
なお、CT撮影の際には、造影剤を用いるケース(造影CT)と用いないケース(単純CT)があり、前者は腫瘍や血管の状態を検査する場合に、後者は脳や骨、肺などの状態を検査する場合に行われます。

ピックアップ記事

関連記事一覧