脳波計におけるフィルタの役割
脳活動に連動して生じる電気的反応について、時間経過に伴う電位差の変化を測定し波形化する脳波計。これには周波数のフィルタ機能が備わっており、検査時には欠かせない役割を果たすこととなります。このフィルタ機能にはどのような意味合いがあるのでしょうか。
脳波について
脳の活動に伴って生じる電気的反応を電位差として検知し、これを時間経過による増減を波形グラフに表したものが脳波です。脳波検査では、検査対象者の頭部にいくつもの電極を取り付け、そこから得られる電位差のデータを脳波計で測定することにより、グラフ座標に脳波を描き出す、という手法が取られます。
脳波が書き表されるグラフは、縦座標に電位差、横座標に時間を取ります。また脳波には基本的な型があり、その種類には、リラックス状態に見られるα波、緊張状態に見られるβ波、浅い眠りに現れるθ波、睡眠状態が深くなるにつれ割合が多くなっていくδ波、が挙げられます。
実際の検査から得られる脳波は、これら典型的な脳波の型の組み合わせとなって描き出されることとなるわけです。脳活動による電気的反応は非常に微弱であり、電位差すなわち電圧ではμV規模となります。
また脳波の周波数(単位はHz。一秒間に波の振幅がいくつ現れるかを示す物理量)は、α波・β波・θ波・δ波が0.5Hz~およそ30Hzの範囲を取ることから、実際の検査でもその領域の周波数が取り扱われることとなります。
脳波とフィルタの関係
脳波検査では、検査対象者の頭部に電極を装着して実施されます。しかし、ここで検出される電位差は、必ずしも脳活動に由来するものだけとは限りません。筋肉の緊張によって生ずる電位差や環境中の電磁波など、脳活動以外の影響も電極に感知されるのが常です。
よって、これら検査対象以外の要素をノイズとして取り除く必要があります。そのために脳波計に備えられているのがフィルタ機能です。前項で述べた通り、検知された中で脳波と判断されるのは特定の範囲の電位差および周波数における波形であるため、それ以外の成分を脳波検査の対象外と見做すことができるわけです。
デジタル脳波計におけるフィルタの種類
主に脳波計で扱われるフィルタとしては以下の4通りが挙げられます。
◆規定以下の周波数はそのまま透過してそれ以上の周波数を逓減させるローパスフィルタ
◆規定以上の周波数はほとんど減衰させずそれ以下の周波数を逓減させるハイパスフィルタ
◆一定の周波数帯域のみ透過し他の周波数を減衰させるバンドパスフィルタ
◆ほとんどの周波数を透過し特定の帯域のみ減衰させるバンドストップフィルタ
これらを用いて、実際に検出される波形からノイズを除去し、脳活動に由来する成分の純度が高まるよう調整され、脳波として描写されるわけです。
まとめ
以上のことから、脳波検査は検査対象者の頭部に複数の電極を取り付け、時間経過に伴う電位差変化を脳波として描き出して行われること。脳波の基本形にはα波・β波・θ波・δ波があり電位差の規模はμV単位、周波数帯域は0.5Hz~およそ30Hzであること、を基本事項として踏まえつつ、脳波計のフィルタ機能は、脳波と見做される範囲以外の周波数をノイズとして取り除くために備えられていることを確認してまいりました。