MRIの取り扱いにはクエンチに対応した安全確認

診断用機器

体の断層画面を撮影する方法として、MRIは大きな磁石による磁場を作り出しFMラジオのような電波を照射して、画像を取り込む医療機器になっています。MRIの磁石に超伝導磁石を使用した場合に、クエンチに対応する為の酸素濃度計が必要です。クエンチ対応とその事例を掘り下げて紹介しましょう。

クエンチとは

オープンタイプのMRIとは違い、それより強力な磁場を作り出す機器として超伝導の磁石を用いたMRI装置は、画像を鮮明に映し出すという特徴を持っています。

超伝導とは、針金をらせん状に巻いたコイルを液体ヘリウムで使用して、絶対零度に近いマイナス269度の温度で冷却する事で超伝導の状態を作り出す事ができるので、中の電気抵抗はゼロに近づけるので大きな電流を扱う事が可能になり、強力な磁場が作り出せます。

何らかの原因が作用して超伝導状態が保てなくなると、流れていた大きな電流に対して急激な負荷をかけてしまう場合があります。その時には、大きな熱を発してしまうので、周りを冷却していた液体ヘリウムが気化する事になり、ヘリウムガスに変化します。

このガスが約700倍に膨張する事によって、周りの酸素を急激に減少させてしまう状態を「クエンチ」と呼んでいます。

クエンチ対応と酸素濃度

検査室でクエンチが起きてしまった場合を想定して、酸素濃度計によって安全管理を行う事が重要になっています。入室前や検査中においても、超伝導のMRI機器を使用する上ではかかせない計器になります。

酸素濃度による危険性

酸素濃度がヘリウムガスの発生で減少する事で、人体への被害が多大に影響してしまいます。酸素濃度(%)と症状などを下記にて見ていきましょう。

1.通常の空気は20.9%
2.安全範囲の最下限度は18%
3.頭痛や耳鳴り吐き気がでる濃度は16%~12%で、動脈血中酸素飽和度 85~80%はチアノーゼになる
4.酩酊状態、意識朦朧やチアノーゼが14%~9%
5.幻覚や意識喪失、全身麻痺などかなり危険な状態10%~6%
7.昏眠や呼吸停止、最悪死に至るのは6%以下

クエンチ安全対策

室内が陰庄になる場合に、外からの空気を取り込もうとする圧力がかかるので、内開きはスムーズですが外開きは開けにくい状態になります。気化したヘリウムは急激に起きる為に爆発のような白煙を生じます。

検査室はこれに対応した換気を十分に行う設備になっていますが、ヘリウムがMRI室内に逆流した場合を想定した時、2次災害を避ける為に酸素濃度の確認をします。

火災が発生した場合

MRIの部分には、電気系ユニットのトラブルや照射コイルなどが発熱した場合に、化粧板などは可燃性の場合もあるので火災につながる場合を想定します。ただちにその場から患者などを避難させて、火災報知器を発動し入室を制限します。非常用オフボタンや装置の全AC電源を切ってコンセントを全て外します。

被害によって類焼の恐れがあり、場合によってはクエンチをさせて扉を閉めて、鍵も閉めて入室出来ないようにして、ヘリウムによる低温火傷を避けて担当者も避難します。強制排気スイッチを入れて安全対策を行います。

事故により金属類の吸着があった場合

作業員や清掃員が誤って金属類を持ち込んで入室した場合には、それを解除する為の緊急停止ボタンによってクエンチが実行される事で、液体ヘリウムを気化させて磁場を落とす事ができますが、ヘリウムはかなりの高額で大量に使用するので、何百万円もの損失がでます。

まとめ

クエンチをした場合には安全確認は勿論重要ですが、再稼働においても時間を要します。担当者といえども必ずメーカに通報し、サービスエンジニアがシステムの確認と安全性を確認してから再稼働する必要があるので、事故の起こらない対策が重要になります。

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