CT装置に活用されている原理とは
人体内部の様子を断面的に画像化する医療用CT装置。臓器など体内の状態を詳しく把握することができ、医療に大きく貢献している医療機器と言えるでしょう。そのCT装置は、いったいどのような原理を用いて人体内部を映し出しているのでしょうか。見ていきたいと思います。
X線とは
結論から先に申し上げますと、CT装置はX線を利用して体内を画像化しているということになります。原理的に捉えるならば、CT検査はレントゲン検査と同様と言えるでしょう。X線は電磁波の一種です。通常の波では、それを伝達する物質すなわち媒質が必要となります。
水面に生じる波では水、空気が振動することにより生じる音では空気が媒質に相当します。しかし、電磁波の場合は例外的に媒質となる物質がなくとも空間内を進むことができます。電磁波には、通信などで利用される電波、赤外線・可視光線・紫外線といった光なども含まれますが、X線は電波や光よりも大きなエネルギーを持っており、人体を透過することも可能です。
そのようなX線の性質を利用したのがCTやレントゲンなどの技術です。物体にX線が当てられた時、その透過率は物体を構成している物質によって異なります。つまり構成物の違いにより、X線照射によって生ずる影の濃さが変わるわけです。
人体の器官についても、それを構成する物質の相違によってX線透過率が異なり、写像の濃淡に違いが現れます。体内器官が異なる濃淡で映し出されることで、それによって体内の状態を見ることができるというわけです。
その原理を直接的に用いた検査法がレントゲン撮影と言えるでしょう。レントゲン検査では、患者さんに向けてX線を当て、その写像をフィルムに焼き付けることでX線写真が撮影されます。骨格は人体器官の中で特にX線を通しにくい物質で構成されているため、白黒のX線写真ではハッキリと白色で表されるわけです。
CT装置の仕組み
前項では、X線を患者さんに当てた際の影を写し取ったものが、レントゲン撮影から得られるX線写真であることを確認しました。X線を1方向から当てた時の影がX線写真の写像となるわけです。
では、CT検査の場合はどうでしょうか。CT検査では主に、人体を横から切ったような輪切り状の断面画像が得られます。レントゲン撮影のようなX線を当てた際の影とは違う形式の画像であることは明らかです。
CT装置では、X線をどのように利用することで、断面画像を得ているのでしょうか? まずは、CT装置の構造から見ていきましょう。CT装置は、3つの装置に大別されます。円環上のガントリ、患者さんが横になる寝台のクレードル、操作や解析を行うコンソールの3つです。
クレードルはガントリ中央の開口部をスライドする仕組みになっており、検査時クレードル上の患者さんはガントリの開口部を通過することになります。ガントリ内部には、X線を照射する管球と、照射されたX線を受け取る検出器が、中央の開口部を挟んで向かい合う形で配置されています。
検査時、ガントリ内蔵の管球は検出器と向かい合ってガントリ内を高速回転し、中央にあるクレードル上の患者さんにX線を照射します。つまり、患者さんに対して360°方向からX線が当てられることになります。
その間、クレードルも連動してスライドし、ちょうど患者さんは螺旋状にX線を受けることになるわけです。患者さんの身体を透過したX線の写像は、管球と向かい合って配置されている検出器に読み取られます。
検出器にデータとして入ってきた写像は、CT装置内蔵のコンピュータによって解析され、コンソールのモニター上にCG(コンピュータグラフィック)による人体断面図として表されます。つまり、CT装置では患者さんの身体を透過した後の写像を直接見るわけではなく、これを解析用のデータとして扱うことでCG化するわけです。
レントゲン撮影ではX線照射が1方向のみに限定して行われます。反面、CT装置では3次元的な方向からX線が照射されることになります。それによって得られたデータから人体断面図を描写し、これを階層的に表すことで、人体内部の様子を立体的に捕捉できます。
立体的な視点から体内を調べることができれば、より詳細かつ的確な病状把握が可能となるでしょう。それを基に、より効果的な治療に活かせるというわけです。
まとめ
以上のように、CT装置はレントゲン撮影と同じくX線の原理を利用したものであることを確認してきました。レントゲン撮影によるX線写真が人体内部を平面的に捉えるものであるのに対し、CT検査では人体内部を立体的に捉えることが可能と言えます。