医療において飛躍的貢献をしたファイバースコープ

診断用機器

【はじめに】
自由に曲がる光ファイバーが束になっているファイバースコープ(内視鏡)の発明は、リアルタイムで人の体内を見ることができるという医療の歴史上画期的なものでした。
医療においてファイバースコープはどのような役割を果たしてきたのでしょうか。今回はそのことについて説明したいと思います。

【ファイバースコープの誕生まで】

内視鏡としては17世紀に「導光器」や「硬性胃鏡」が作られましたが、いずれも金属の筒や金属管を体内に入れ、ランプの光で観察するというものでおよそ実用的とは言い難いものした。
電気が発明されて、18世紀のドイツの医師であるシンドラーが長さ75cmで直径11㎜、先端3分の1が曲がる軟性胃鏡を開発し近代的で現代の内視鏡に近づきましたが、まだ金属製であったため患者の負担が大きいものでした。

その後19世紀末に柔らかい素材での胃カメラの構想が生まれ、20世紀に入り1950年胃カメラが開発されました。
さらに1960年代にアメリカでグラスファイバーが開発されたことによって、内視鏡は大きな飛躍を遂げることになります。
グラスファイバーは細く、しなやかに曲がるガラス(光ファイバー)の管に光を通すことができる性質を利用してそこから人の体内を見ることができるファイバースコープが誕生しました。

ファイバースコープは胃カメラよりはるかに細い機器であることから、患者の負担が圧倒的に減少したのとともに、胃以外の臓器も観察できるようになるなど医療の進歩における貢献は大変に大きなものでした。
そして最近ではスコープの先端に小さなビデオ(超小型撮像素子=CCD)をつけた内視鏡が登場するなど、より便利に進化を遂げています。

【日本人と内視鏡の意外な関係】

胃カメラ、ファイバースコープやその後の内視鏡のカメラの開発は光学機器や電子機器メーカーを制作する日本の会社オリンパスが大きく関わっています。
なぜかというと、かつてほかの国とくらべ日本では胃がんによる死亡率がとても高かったため、胃がんの初期発見は大きな悲願でした。
そのため胃カメラから始まる内視鏡の開発が進み、ファイバースコープの誕生によって胃がんでの死亡率を大きく下げることに成功したのです。

【まとめ】

はるか昔より人の体内を見て治療をしたいという試みはあったものの、それが実現できたのは現代で、グラスファイバーによるファイバースコープの登場を待たなければいけませんでした。ファイバースコープによって多くの病気の発見、診断や治療を容易にすることができたのです。ファイバースコープ(内視鏡)は何気なくいろんな場所で見ることがある医療機器ですが、日々の私達の健康を守っていることに感謝したいものですね。

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